挨拶から生まれるという種 待降節第4主日(ルカ1・39〜45)

私たちは、その日に初めて会った親しい人には、「おはようございます」「こんにちは」など「挨拶」をします。また、別れるときにも「さようなら」などと「挨拶」をします。挨拶の由来は、禅宗の師匠が弟子の悟りの深浅を測るために言葉を交わしたことが始まりだそうです。私たちが何気なく交わしている「挨拶」も由来を知ると深いものがありますね。

きょうのみことばは、マリア様がエリサベトを訪問する場面です。マリア様は、み使いガブリエルからイエス様を身籠ったことを告げられ、さらに「あなたの親戚エリザベトも、年老いていながら男の子を身籠っている。不妊の女と言われていたのに、はや6ヶ月になっている。」(ルカ13・6)と告げられます。マリア様は、そのみ使いの言葉を聞くや否やエリザベトのところに旅たちます。ナザレからエルサレムまで直線で100㎞くらいあり、実際の道路を使うと150㎞ほどあるようです。みことばには、ユダの山地にある町に向かった、とありますのでさらに遠く、平地だけではなく山や谷などを歩くのですから、3、4日かそれ以上かかったことでしょう。この距離をまだ幼いマリア様がエリサベトを訪ねて行きます。

マリア様は、どのような気持ちでエリサベトの所に行ったのでしょう。みことばには、「急いで」とありますから、自分に起こったことをエリザベトに知らせたい、み使いからのお告げのこと、聖霊によって身籠ったことを分かち合いたい、何よりも人の力を超えた神様からの恵みによって身籠ったという喜びを互いに祝福したいという気持ちがあったことでしょう。

マリア様は、ザカリアの家に行きそこでエリサベトに会い【挨拶】をします。この挨拶は、私たちが使っているような「こんにちは」という言葉だけではないようです。み使いガブリエルがマリア様に伝えたお告げの中に「『喜びなさい。恵まれた方よ。主はあなたとともにおられます。』この言葉にマリアは胸騒ぎし、いったい、この挨拶は何のことだろうかと思い惑った」(ルカ1・28〜29)とありますから、神様からの祝福、心からの祝福を伝えるようなもっと深い意味があるのではないでしょうか。

みことばは、マリア様の【挨拶】を聞いたエリサベトの様子が、「体内の子が踊り、エリサベトは聖霊に満たされて、声高らかに叫んで言った。」とあります。妊婦さんが「アッ。今この子がお腹を蹴った」と使っているのを耳にすることがあるのではないでしょうか。私は男性ですからどのような感覚なのかよくわかりませんが、「お腹が鳴った」「胃腸が動いているのかな」という感じだそうです。エリサベトが感じた「体内の子が踊り」というのは、この胎動ということではなく、エリサベトのお腹の中で飛び跳ねている、彼女自身もまたその体内の子も一緒になってマリア様の【挨拶】を聞いて喜び踊っているということではないでしょうか。神様からの祝福がマリア様を通してエリサベトとその子にも伝わったのです。

さらに、聖霊に満たされています。この聖霊に満たされた感じは、本当に喜びに満たされた、恵みに満たされた感じといってもいいでしょう。み使いガブリエルの挨拶の中にある「喜びなさい。恵まれた方よ。」という【挨拶】のように、心からの喜びで満たされる感覚ではないでしょか。聖霊は、愛である三位一体の神です。エリサベトは、マリア様からの【挨拶(神様の祝福)】を聞き聖霊に満たされ、その心からの喜びが叫びとなって「あなたは女の中で祝福された方。あなたの胎内の子も祝福されています。……」と口からほとばしります。

マリア様がエリサベトの所に訪問するということは、【挨拶】の素晴らしさを伝えるという大きな意味があるのではないでしょか。今ですと、電話やメールで済むかもしれませんが、人と人が顔を合わせ、お互いが言葉を通して喜びを分かち合うとき、そこには何ものにも代え難い恵みで満たされることでしょう。この2人の愛で満たされた関係は、エリサベトの賛歌に現れています。

エリサベトの賛歌は、「主から告げられたことが成就すると信じた方は、ほんとうにお幸せなことです。」という言葉で終わっています。これは、イエスラエルの民が何千年もの間、救い主が来られるということを待ち望んで来ました。ルカ福音書にもマタイ福音書にも「イエスの系図」が書かれてあります。特にマタイ福音書は、「アブラハムの子、ダビデの子であるイエス・キリストの系図。……アブラハムからダビデの代まで14代。ダビデからバビロン捕囚までが14代。バビロン捕囚からキリストまでが14代である。」(マタイ1・1〜17)とあります。エリサベトの賛歌は、この長い歴史の中で救い主を待ち望み、信じ切ったマリア様への祝福とも言えるのではないでしょうか。

私たちはもうすぐ「主のご降誕」を迎えます。私たち一人ひとりがマリア様やエリサベトのように聖霊に満たされて主のご降誕を迎えることができたらいいですね。

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