大掃除という種 待降節第2主日(ルカ3・1〜6)

私たちは、年末になると決まって「大掃除」を行います。年末の大掃除は、平安時代から始まり、1年の汚れを清める「煤払い」と言って仏壇や神棚を掃除し新年にやってくる「歳神様」に気持ちよく過ごしていただくためにするそうです。また、江戸時代には、12月13日が「鬼の日」と言うことで「鬼を外に出して福を呼ぶ」ということで、この日に「大掃除」を行なっていたようです。

このように考えますと、待降節に私たちが「ゆるしの秘跡」を行なってふさわしい心でイエス様を迎えるというのも、仏教や神道の人たちが「歳神様」を迎えるということと共通しているような気がいたします。

きょうのみことばは、洗礼者ヨハネの「召命」の場面です。私たちはこの箇所が朗読されますと、イエス様を迎える準備をしなければ、と思うのではないでしょうか。みことばは、洗礼者ヨハネがどのような時代におん父から召されたかということが書かれてあります。ルカは、イエス様がお生まれになられた時にも、「皇帝アウグストゥスによって全世界の住民に登録せよとの勅命が発布された。この登録はキリニウスがシリアの総督であった時に行われた。」(ルカ2・1)とありますように歴史的な記録が記しています。マタイ福音書では、「ヘロデ王の時代にユダヤの地のベツレヘムでお生まれになったとき……」(マタイ2・1)とあります。このように、見るとルカはイスラエルの王だけではなく、ローマ皇帝や総督も意識して入れていたようです。

不思議なことにルカ福音書は、「ポンティオ・ピラトがユダヤの総督」とあり、ユダヤ人のヘロデ、その兄弟たちがイスラエルの北にある「異邦人の地」と言われる所の領主となっていた時代を記しています。異邦人であるローマの総督が、ユダヤ人たちの信仰の中心であるエルサレムがあるユダヤに居を構え、ユダヤ人が異邦人の地を治めていたのです。ルカは、このようなアンバランスな時代背景を表して、「荒れ野で、神の言葉がザカリアの子ヨハネに下った」と記しています。私たちは、みことばだけを読む時、この時代がどのような社会であったか実感できません。もしかしたら、ユダヤ人たちにとってローマの総督が自分たちの信仰の拠り所であるエルサレムにいるという屈辱感を抱いていたことだったでしょうし、ローマに税金を払わなければならないという、経済的にもストレスを覚えていたことでしょう。

ザカリアは祭司であり神殿に入って香をたく役ができる人ですから宗教的には、エリートといってもいいでしょう(ルカ1・8~9)。ですからエルサレムに近い所に住んでいました。しかしその子である洗礼者ヨハネは、「荒れ野」でおん父に召されたのです。ルカは、なぜ洗礼者ヨハネが「荒れ野」にいる時に、神からの「召命」を記したのでしょう。「荒れ野」は、人の力だけでは生きていけない所、おん父への信頼が必要不可欠な所なのです。言い換えますと、その人の信仰が試される所と言ってもいいでしょう。洗礼者ヨハネは、政治的、宗教的な富と権力の中心から避けて荒れ野にいたのかもしれません。

おん父からの召命を受けた洗礼者ヨハネは、ヨルダン川周辺の地域一帯を巡り「罪の赦しへ導く悔い改めの洗礼」を宣べ伝えます。ここから、救い主イエス様を迎える準備が始まると言ってもいいでしょう。日常の慌ただしさ、人間関係や様々な物事からのしがらみ、できれば見ることを避けたいことなど、どうしようもない私たちの弱さを見つめ直し、それらの弱さを赦していただく【悔い改め】へと向かわせるというのも、お生まれになられるイエス様を迎える準備なのではないでしょうか。

みことばは、「主の道を整え、その道筋をまっすぐにせよ。すべての谷は埋められ、すべての山や谷は低くされ、曲がりくねった道はまっすぐに、でこぼこの道は平らにされる。すべての人が神の救いを見る」というイザヤ書(40・3〜5)の箇所が引用されます。この箇所の1節前に「まことに、服役の時は満ちた。まことに、その悪行は償われた。まことに、そのすべての罪の故に主から、重ねて罰を受けた。」(イザヤ40・2)とありますように、イスラエルの民がバビロン捕囚からの解放を表している箇所です。ルカは、混沌とした荒れた社会の中に、救い主が生まれるそのための準備として、すべての人が【神の救い】を見るためにおん父が道を準備される、と伝えているのです。バルク書には「神が、栄光に輝くご自分の慈しみと正義とをもって、イスラエルを導かれるからである」(バルク5・9)とあります。

私たちは、おん父ご自身が、救い主イエス様がお生まれるという恵みの日をご準備され、その救いへの道を作った道を歩んでいくのです。私たちは、その道をどのような気持ちで歩んでゆくのでしょうか。私たちは、おん父が準備してくださったその道を歩む時、自然に謙遜な心で感謝しながら歩んでゆくことでしょう。主のご降誕を前にして私の心の【大掃除】をすることができたらいいですね。

あなたにオススメ