『鈴木家の嘘』:ブラザーが選ぶ!おすすめ映画

嘘をつくことは悪いことであるが、それが良い結果を得る手段としてのものであるような嘘をつくことを「嘘も方便」という。この映画は、まさに母親を苦しまないようにするためについた「嘘」の物語である。

鈴木家の長男浩一(加瀬亮)は、2階の自分の部屋を片付け窓の外をぼんやりと見ていた。そして、天袋に掛けてあったロープに首をかけ自ら命を絶った。そんなことも知らずに母親悠子(原日出子)は、昼食に浩一が大好きなオムレツを作り、浩一をダイニングに誘うが返事がなかった。浩一は、ずいぶん前から引きこもっていて部屋から出ようとしないのである。悠子は、浩一の部屋に入るなり、天袋からぶら下がっている浩一を目撃し、台所に戻り包丁を手にして2階に行く。その夕方長女の富美が帰宅するが真っ暗の家に不審を抱き2階に行き倒れた母と首をつった兄の姿を見るのであった。

一方、父親の幸男(岸辺一徳)は、火葬を済ませたある日、息子の部屋の机の引き出しからソープランド「男爵」のチラシを見つけ、息子が生きた証しを探すためにチラシをもって店に出向く。実は、生命保険の受取人として富美と「男爵」のイヴちゃんが入っていたのであった。一方、富美は、兄の死を受け入れられずグリーフケアのドアを叩く。

浩一の四十九日、幸男、富美、そして、幸男の妹君子(岸本加世子)とアルゼンチンで赤エビの商売を始めた悠子の弟浩(大森南朋)は、納骨のために寺に行くが、「自ら死を選んだということで、穢れている遺骨は納められない」と言われ返させられる。途方にくれて食堂で昼食をしている所に病院から悠子の意識が戻ったという知らせを受ける。悠子は、浩一の死のショックから意識が戻らず入院中であったのある。

病院に駆けつけた家族に再会した悠子は、浩一の姿が見えないのを心配して「浩一は」と尋ねる。悠子は、「逆行性健忘」らしく息子の死の部分だけが欠落しているのであった。富美は、母親の問いに「お兄ちゃんは、アルゼンチンのおじさんの仕事を手伝っているの」ととっさに嘘をつく。それからと言うもの、鈴木家の嘘が始まる。

幸男は、遺骨と遺影をたんすに隠し、原宿に偉大な革命家チェ・ゲバラのTシャツを買いに行き、富美は、叔父の会社でアルゼンチンに駐在員として派遣されている北別府(宇野祥平)に兄に成りすましてもらい、嘘の絵葉書を送ってもらうように手配する。そして、悠子の退院の日を迎えるのであった。

皮肉にも、浩一の死と悠子への嘘によって今までばらばらであった家族が一致へと向かう。監督野尻克己自身も兄が自ら命を絶ったという経験があり、彼自身も残された「家族」の中に何か答えを求めていた。「鈴木家の嘘」はそんな監督自身が自ら命を絶った家族のやるせなさ、怒りや憎しみ、そして悲しみの先にある答えを見つけようとして作った作品である。

©松竹ブロードキャスティング


映画『鈴木家の嘘』
2018年11月16日(金)より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
監督・脚本:野尻克己
撮影:中尾正人
照明:秋山恵二郎
録音:小川武
美術:渡辺大智/塚根潤
編集:早野亮
音楽・主題歌「点と線」:明星/Akeboshi(RoofTop Owl)
出演:岸部一徳/原日出子/木竜麻生/加瀬亮/岸本加世子/大森南朋
配給:松竹ブロードキャスティング/ビターズ・エンド
時間:133分
2018/日本
公式サイト:www.suzukikenouso.com

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