誰でも幼子という種 年間第27主日(マルコ10・2〜16)

男性と女性の「出逢い」には理屈がないと言ってもいいでしょう。「どうして結婚したの」と聞いても十人十色でそれぞれの答えが返ってくることでしょう。そのくらい、結婚というのは人の力では分からないもの、神秘的なものなのではないでしょうか。

きょうのみことばは、「離縁の問題」と「イエス様と幼子たち」という場面です。イエス様が旅をしていたところに群衆が集まって来ました。このことを知ったファリサイ派の人々は、イエス様を試みようとして近づき「夫が妻を離縁することは許されていますか」と質問をします。彼らは、この問題についてイエス様に尋ねる前に答えがわかっていたのです。しかし、あえてイエス様の口から聞きたかったのでしょう。もしイエス様が「離縁」を否定すればモーセが言っていたことを否定することになりますし、肯定すれば「離縁」を正当化することになってしまいます。

イエス様は、彼らの質問に対して直接答えることをなさらず「モーセはあなた方に何と命じているか」と投げかけられます。モーセは、律法をおん父から頂いた方ですからイエス様は「モーセ」の名前を出されたのでしょう。ファリサイ派の人々は、「モーセは、離縁状を書いて離縁することを許しました」と答えます。彼らはモーセが定めた掟を知っていました。現在の日本の離婚率は、30%と言われているようですが、モーセの時代から「離縁」の問題があったようです。

イエス様は、彼らの答えに対して「モーセはあなた方の心が頑なだから、そのような掟を書いたのである。」と言われます。「心が頑な」という意味は、「心がおん父のみ旨から離れている状態」ということのようです。モーセは、「離縁」を肯定したのではなく「おん父の心から離れるよりは『離縁』する方を許す」という苦渋の選択をしたのでは無いでしょうか。これは今の私たちの中で問題になっていることにも通じることなのかもしれません。

イエス様は、続けて「神は創造の初めから、『人を男と女に造られた』……彼らはもはや二人ではなく、一体である。それ故、神が結び合わせたものを、人間が引き離してはならない」と言われます。イエス様は、「離縁」についての是非を答えられるのではなく、「おん父が結び合わせた男女の出会いは、人間的な次元で考えることではなくもっと神秘的なものなのです」と言われているのではないでしょうか。

弟子たちは、イエス様と共に家に戻った後、この「離縁」についてイエス様に質問をします。弟子たちも「離縁」については興味があったのかもしれませんし、また、彼らの認識もファリサイ派の人々と同じ考えだったのかもしれません。イエス様は、「男女を問わず『離縁をする』ということは、お互いが『姦通』の罪を犯すことです」と厳しい答えを弟子たちに示されます。イエス様は、【離縁】の問題を考えるよりむしろ【結婚】の素晴らしさ、神秘について弟子たちに気づかせようとされたのではないでしょうか。

続いてみことばは、「幼子たち」について書かれています。マルコ福音書で【離縁】について語られた直後に【幼子たち】について書かれているということは意味があると言ってもいいでしょう。人々は、自分の「幼子」をイエス様に触れていただこうとして集まって来ます。当時、ラビに自分の子どもを触れてもらうという習慣があったようです。親にとっては、ただ触れていただくということよりも、その子どもの健康や祝福を願う気持ちがあったのではないでしょうか。このような気持ちは、今の私たちの中にもあるような気がいたします。

そんな人々の心に対して弟子たちはたしなめます。イエス様は、弟子たちがたしなめたことに対して憤られ「そのままにしておきなさい。幼子たちがわたしのもとに来るのを止めてはならない。神の国はこのような者たちのものだからである」と言われます。イエス様は、これまで「このような幼子の一人を受け入れる者は……」(マルコ9・37)、「わたしを信じるこの小さな者」(マルコ9・42)というように「幼子や小さな者」に対して目を留められ、大切にされていました。残念ながら弟子たちは、イエス様のそうした教えや姿を受け入れていなかったようです。

イエス様は、幼子たちを抱き寄せ、彼らの上に両手を置いて祝福されます。この光景は、なんと微笑ましく愛で満たされた場面ではないでしょうか。言い換えますとこの場そのものが「神の国」と言ってもいいでしょう。夫婦が揃って我が子を連れて来る、そこに家庭信仰の表れが出ているようです。イエス様は、この家庭で育む助け合い、労わりあいの美しさを伝えようとしているのではないでしょうか。

私たちは両親の【結婚】によって【生】を受け、【幼子】としてイエス様に祝福をいただいたのです。私たちは、いま「生きている」という恵みを感謝し、賛美のうちに歩んでいくことができたらいいですね。

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