祈りと働きという種 年間第16主日(マルコ6・30〜34)

私たちは、時々自分たちが体験したことを「分かち合う」ことがあります。そのような時、喜びはさらに大きくなり、悲しみは小さくなります。また、相手の分かち合いを通して共有し心が豊かになり、同じような体験をする時に物事や考え方の層が幅広くなることもあります。

きょうのみことばは、二人一組で福音宣教に派遣された弟子たちが自分たちの行ったことを報告するところから始まっています。彼らは、イエス様から教えられたように、杖とサンダルの他は、パンの袋も、小銭も持たず、下着も2枚着ないようにして宣教に出かけました。弟子たちは、おん父に信頼しイエス様が人々を癒し、教えたように、彼らも行く先々で行いました。きっと、弟子たちは、不安や緊張があったでしょうが人々が癒され、変化して行く様を見ることで達成感や心が喜びで満たされていったことでしょう。

弟子たちは、自分たちの体験したことをイエス様にどのような気持ちで報告したのでしょう。ルカ福音書には、「主よ、お名前を用いると、悪霊どもでさえ、わたしたちに服従します。」(ルカ10・17)と弟子たちがイエス様に報告する場面があります。弟子たちは、イエス様に自分たちが行って来た宣教の結果を興奮しながら伝えたことでしょう。イエス様は、弟子たちに「霊たちがあなた方に服従するからといって、喜んではならない。むしろ、あなた方の名が天に書き記されていることを喜びなさい」(ルカ10・20)と言われています。このルカ福音書は、72人の弟子たちを派遣したときの報告の場面ですが、きょうの箇所の12人の弟子たちも同じような様子ではないかと思われます。

イエス様は、弟子たちの宣教の様子を聴きながら喜ばれると同時に彼らの業が自分たちの力で行ったと勘違いしないように戒められたのかもしれません。宣教の業は、すべておん父からの恵みということを忘れないようにしなければ、傲慢になってしまいます。私たちは、時々宣教の業をあたかも自分の力で行ったかのように思ってしまう傾きがあります。うまくいっている時には、改めて自分の行いが「あなた方の名が天に書き記されていることを喜びなさい」というイエス様の言葉を思い出すことができたらいいですね。

イエス様は、弟子たちの報告を聴き終わると「さあ、あなた方だけで人里離れた所に行き、そこでしばらく休みなさい」と言われます。みことばには、「出入りする人が多くて、食事する暇さえなかったからである。」とあります。弟子たちが方々で行った業が町中に広まり、さらに多くの人々が弟子たちの噂を聞いて集まって来たのでしょう。もしかしたら人々は、弟子たちがイエス様に報告している最中も家の周りにいたのかもしれません。このような場面は、以前イエス様が人々を癒し、教えた時にも起こっています(マルコ3・20)。

イエス様は、「弟子たちが疲れて倒れるのではないか」または、「弟子たちが自分たちの癒しの業に酔ってしまうのではないか」と心配されたことでしょう。それで、弟子たちに「さあ、あなた方だけで人里離れた所に行き、そこでしばらく休みなさい」と言われます。司祭や修道者は、年に一度「年の黙想」を2、3日から1週間、または10日間行います。それは、自分たちの1年間を振り返るとともにこれからの1年間の霊的な目標を立てるために必要だからです。

聖ベネディクトは、「祈り、かつ働け」と言っています。それは、「宣教活動」という素晴らしい業であっても、ややもすると活動だけに重点を置き大切な【祈り】が疎かにならないためです。どんなに高級車でも「ガソリン(燃料)」がなかったら走ることができず何の役にも立ちません。それと同じように私たちの福音宣教は、日々の【祈り】によって「ガソリン(燃料)」を補充しなければ枯渇してしまいます。イエス様は、弟子たちに「さあ、あなた方だけで人里離れた所に行き、そこでしばらく休みなさい」と言われたのもそのためではないでしょうか。

しかし人々は、せっかくイエス様が弟子たちを舟に乗せて「人里離れた所」に行かれても、イエス様たちを追いかけて先回りをして待っていました。イエス様は、人々の様子をご覧になり、牧者のいない羊のようなありさまを、憐れに思い、いろいろと教え始められます。羊にとって「牧者」がいないということは、牧草地に行くこともできず、また、野獣の餌食となるという「死」に結びついてしまします。人々にとって「牧者」というふさわしい「指導者」がいなかったのです。彼らはイエス様の教えが「律法学者のようにではなく、権威ある者の教え」(マルコ1・21)ということを感じていました。イエス様の「教え」「癒し」は、人々を惹きつけ、ご自分たちより先に「人里離れた所」に先回りさせるというほどの力があったのではないでしょうか。

私たちは、祈りを大切にしながら、イエス様に倣って【牧者】としてみことばを伝えることができたらいいですね。

あなたにオススメ