おん父の恵みという種 洗礼者聖ヨハネの誕生(ルカ1・57〜66、80)

子どもが生まれるというのは、父親以上に母親の方の喜びの方が大きいと言ってもいいでしょう。母は私を出産したとき今でいう高齢出産で、医者から「自分の命かそれとも子どもの命か」と言われ、「この子の命を」と言ったそうです。この言葉で、母も無事で私も生まれることができました。

きょうのみことばに出てくるエリザべトも高齢出産(ルカ1・18)のようですが、洗礼者ヨハネを身籠った時の喜びを「これこそ、主の業です。主は私を顧みて、人々の間でわたしの恥となっていたことを、取り除いてくださいました。」(ルカ1・25)と伝えています。きょうお祝いする洗礼者聖ヨハネの誕生の祭日は、【おん父の業】が人々の目に見える形で実現したと言ってもいいのかもしれません。

きょうのみことばの最初は、「月が満ちて、エリザベトは男の子を産んだ。近所の人々や親族は、主がエリザベトに大きな憐れみをおかけになったことを聞いて、ともに喜んだ。」というみことばから始まっています。マリア様がイエス様を出産する時も「出産の日が満ちて、マリアは男の子を産んだ。」(ルカ2・7)とあります。この「月が満ちて」とか「日が満ちて」いうのは、おん父の【愛】で満たされてという意味が含まれているのではないでしょうか。今の時代では、約10ヶ月で出産を迎えるということは分かっていますが、それでも出産というのは、おん父の恵みなしには考えられないと言ってもいいでしょう。

近所の人々や親族は、エリザベトが男の子を産んだことに喜んで彼女のところに集まってきます。これは、私たちが思っている以上に「男の子を産む」ということは、神の恵みであり、親族の子孫を絶やすことなく繁栄にも繋がり、神の恵みが途切れることなく続くということを意味しているということではないでしょうか。洗礼者ヨハネは、おん父の恵みと、両親や親族や近所の人々の祝福を受けて生まれてきます。さらに、その8日目の命名の日にも人々は、エリザベトの所に集まってきます。親は自分の子どもに「命名」をするとき、その子への夢や希望、このように育って欲しいという思いを込めて名前を決めます。人によっては、画数を重視する人、親や大切な関わりを持った人の一字を入れる方もおられることでしょう。パレスチナ地方の名前は、その人の人格すべてを表していますから【命名】は大切なことだったようです。

人々は、父親の名をとって「ザカリア」と名づけようとします。しかし、エリザベトは「それはいけません。ヨハネと名づけなくてはなりません」と言います。人々は「あなたの親戚には、そういう名の人は一人もいない」と言って、父親であるザカリアに尋ねます。エリザベトの意見は、ほとんど無視されます。当時の女性の地位は、とても低く見られていました。ですから、公な決め事などは、その家の「家長」である父、夫が行なっていました。人々がエリザベトに対して「あなたの親戚には、そういう名の人は一人もいない」と言ったのは、「あなたの出る幕ではない、あなたには自分の意見をいう資格がない。」という意味合いもあったのかもしれません。

ザカリアは以前ガブリエルからお告げを受けた時に言われた通りに、書き板に「その名はヨハネ」と書きます。人々は、自分たちの親戚の中にない名前を選んだこと、また、エリザベトが口にした「ヨハネ」という名に決めたことを不思議に思います。ちなみにこの「ヨハネ」という名は、「神は慈しみ」という意味があるようです。このことから、「ヨハネ」がおん父の慈しみによって生まれ、また、両親に対してもおん父の【慈しみ】が注がれていたということがわかるのではないでしょうか。さらに、洗礼者ヨハネが「イスラエルの多くの子らを、彼らの神である主のもとに立ち返らせる。」(ルカ1・16)という使命を持つものという意味もあるのではないでしょうか。

そのとき、今まで口がきけなかったザカリアがたちどころに開け、舌が自由になり、神をほめたたえます。このことは、ガブリエルから言われた「今、あなたは口がきけなくなり、このことが起こる日まで話すことができなくなる」(ルカ1・20)ということが成就されたのです。ザカリアは今まで話さなくなっていたことへの恨みではなく、神をほめたたえます。人々が恐れたのは、彼の舌が解けたことに神の介入を見たからではないでしょうか。この「恐れ」というのは、怖いという意味ではなく、神への「畏敬」の意味があるようです。ですから、洗礼者ヨハネの誕生の出来事がユダヤの山地の至る所で話題になるほど広まったのではないでしょか。そして、ヨハネは、成長し、その精神も強くなります。このことも、おん父の恵みを表していると言ってもいいでしょう。

私たちは、洗礼者ヨハネの誕生を祝いながら、私たち一人ひとりも同じようにおん父の恵みの中で、また両親や親戚やたくさんの人々の祝福の中で生まれてきたということを改めて感謝できるといいですね。

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