パウロのこころをもって 洗川修一修道士

私と聖パウロ修道会(召命)とのきっかけはいたって自然で、当時はそれが普通だったような気がします。

聖パウロ修道会の神父さんが出身教会の夏の子供たちの黙想会に、指導で来られていたときの出会いと、先輩たちがすでに何人か入会していたことが大きな要因です。

もちろん家族の中で兄弟が多かったこともあって、その中から誰か教区の神学校か修道会に行くということが、暗黙のうちに期待されていました。そして、小学校を卒業して修道会に入るわけですが、自分がこれから生活する聖パウロ修道会については、まったく分かっていなかったといったほうが正直なところでしょう。

福岡での中学課程、東京での高校過程という初期養成の中で、修道院の中での生きる術を習って、指導司祭や仲間たちに助けられながらの歩みを経て、修道生活本番の始まりである修練期、有期誓願期を過ごすことになりますが、それはある意味では、定められたレールの上を脱線しないように、修道生活に必要ないろいろな勉強と使徒職に取り組むことでした。

しかしながら、まだその段階においても修道会の使命、はたまた修道会の霊性といわれても、今一つピンとこない頭だけの世界で、それが身についている状況にはほど遠いものがありました。でも毎日毎日を生きることに精一杯でしたから、この修道生活に疑問を持つことはありませんでした。

ところが、終生誓願者として修道会のいろいろな使徒職の場にたずさわったり、また時には責任ある立場を命じられて行くようになると、それまでとは一変して、自分の思うところではなく、想定もしなかった現実にぶつかり、修道者とは、修道生活とはこんなものなのだろうかと、悩むことがたびたびありました。

そんなこんなことがあって、今の自分があるのですが、やっと自分の修道召命の意味を理解できると同時に、私たちに託されている使命の重大さと困難さとをひしひしと感じている自分がいるのも確かです。

幸いにも、パウロの足跡を訪ねるため、トルコ巡礼に行く機会がありました。初めてのトルコということもあって、自分としてはいろんな期待やら不安が入り混じるものがありましたが、パウロの歩んだ道を一度はぜひ見たいということと、いろいろなことに翻弄され、折れかかっている自分を奮い立たせることができればという強い望みがありました。また、パウロの宣教への熱意に少しでもあずかることができればという気持ちもありました。

残念ながら、パウロが生まれたタルソや、復活のキリストに出会ったダマスコには行けませんでしたが、特に黙示録に記されている七つの教会を含む、トロイ、トロアスの港、アッソス、ベルガマ(ペルガモの教会)、アクヒサル(ティアティラの教会)、サルデス(サルディスの教会)、イズミル(スミルナの教会)、セルチュク(エフェソの教会)、アラシェヒル(フィラデルフィアの教会)、ミレトス、デニズリ(ラオディキアの教会)、パムッカレ、ホナズ、アンタルヤ、ペルゲ、ヤルバッチ、コンヤ、カッパドキアなど、そして最後にトルコの首都であるイスタンブールを訪れることができました。

巡礼に先立っての説明では、「訪ねるところはほとんどが遺跡ばかりだよ」と聞かされていましたが、実際その通りでした。最初はものめずらしく感じていましたが、行くところ行くところ同じような風景を見ていると、新鮮さがなくなって、みな同じように見えてくる感じもしました。

しかし、広大なトルコの土地を車で移動したり、多くの遺跡を時間をかけて実際に歩いているうちに、2000年前ここをパウロも歩きながら宣教したのだと思うと、来た甲斐があったなあと、つくづく思わされました。

見渡す限りのオリーブ畑、トルコの人口よりも多いといわれる羊と山羊の群れがあったり、カッパドキアでは自然の不思議な光景とそれを覆うかのように降り積もる雪にも出会いました。

時々巡礼で訪れたところを思い出していると、パウロのことをもっと知りたいという気持ちがわいてきます。

そして、ある講演会での話しの中で、「パウロを突き動かしたのはキリストである」「パウロのうちで働いたのはキリストである」「その同じキリストは、私たちの中で今も働いている」。そこに強く心を惹かれました。

修道生活に召され、パウロのように生涯をキリストに賭ける者として、パウロのこころをもって、創立者・福者アルベリオーネ神父のアヴァンティ(前進)の精神で、この修道生活に邁進したいと思っています。

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