ここに心を留めるという種 受難の主日(マルコ11・1〜11)

典礼は、聖週間に入ります。私たちは、四旬節を通して主の受難と復活を黙想して来ました。この四旬節を振り返りながら新たに復活を迎える準備となれば良いですね。

きょうのみことばは、イエス様がおん父のご計画を実行するために【エルサレムに入城】する場面です。このみことばこの前に「一行はエルサレムに上る途上にあった。イエスは先頭に立って進まれた。弟子たちは驚き、従う者たちは恐れていた。」(マルコ10・32)とあります。この後イエス様は、恐れている弟子たちにご自分の身に起こる【受難と復活】について語られます。弟子たちは、これまでイエス様が教えたこと、人々を癒されたことに接して、イエス様こそ【メシア】であることに気が付いていたようです。それと同時に、イエス様ご自身が【受難と復活】について度々語れたこともあり、また、ユダヤ人たちがイエス様を殺そうと計画を立てていることも気が付いていたのかもしれません。

そんな中で、イエス様と弟子たちは、死海の近くにある町エリコからエルサレムの手前まで来たのです。そして、エルサレムまであと少しに所にあるオリーブ山の麓のベトファゲという町にたどり着きます。その時に、イエス様は、2人の弟子たちを呼ばれ「向こうに見える村に行きなさい。村に入るとすぐに、まだ誰も乗ったことのない子ろばがつながれているのを見つけるだろう。それを解いて引いてきなさい。もし誰かが『何をするか』と聞いたら、『主がお入り用です。またすぐにここに戻します』と答えなさい」と伝えます。この箇所は、とても不思議な場面ではないでしょうか。イエス様は、まだ起こっていないことをまるでドラマの予告編のように弟子たちに伝えられます。これには、イエス様の周りにろばの持ち主がいてすでに了承済みであったとか、イエス様の信奉者がいてあらかじめ話をしてあったとかといういくつかの説があるようです。

しかし、ここで大切なことは、出来事よりも「まだ誰も乗ったことがない子ろばをイエス様の所に引いて来ること」ではないでしょうか。誰も乗っていていないということは、傷ついていていないということです。聖書の中で神聖な目的で使われる動物は、傷がないもの、まだ誰も使っていない動物を使っていたようです(民数記19・2、申命記21・3、サムエル記6・7)。イエス様はおん父のみ旨を行うために、ご自分を捧げるための乗り物として誰も乗ったことがない子ろばを弟子たちに連れてこさせたのです。

もう一つは、2人の弟子たちを選ばれたことです。イエス様は、かつて弟子たちを2人ずつ選ばれて宣教に派遣されました(マルコ6・7)。彼らは、この派遣のことを思い出したのかもしれません。彼らにとってこの派遣は、イエス様の【受難と復活】に関わる大切な働き、使命と言ってもいいでしょう。この2人の弟子は、子ろばがつながれている村まで行くまで、「本当にイエス様が言われたように子ろばがいるのだろうか。いたとしても何も問題なく引いて来ることができるのだろうか」という心配をしていたのかもしれません。彼らは、イエス様が言われたことに忠実に従い、無事にイエス様のところに子ろばを連れてくることができました。ここで、大切なことは、イエス様が言われたことに不安があったとしても信頼して従うことではないでしょうか。

イエス様は、弟子たちのマントを掛けたろばに乗られエルサレム入城されます。普通「ろば」は、運搬ようで人を乗せません。イエス様が「ろば」に乗られたということは、イエス様の【謙遜】を表しているのではないでしょか。イエス様は、メシアとしてエルサレムに入城しますがそれは、ローマ軍が戦いのため、占領のため馬に乗って入るようにではなく、平和で謙遜な心を持ってエルサレム入城されたのです。私たちにとって【ろば】はどのような意味があるのでしょうか。振り返ってみると何かの発見があるかもしれません。

さて、過越の祭りに来ていた多くの群衆は、イエス様がろばに乗られてエルサレムに入られるのを見て興奮したのでしょう。彼らは、自分たちのマントを道に敷いたり、畑から切ってきた小枝を敷いたりしてイエス様を迎えます。彼らが自分たちのマントを道に敷くという行為は、王位に就く人を敬意を持って迎えるという意味があったようです。彼らにとってイエス様は、メシアとして自分たちを救ってくださる【王】だったのです。しかし、皮肉なものでイエス様を【王】として興奮のうちに迎えた彼らは、イエス様に対して「十字架につけろ」(マルコ15・13)と叫ぶのです。人の弱さ、醜さを痛感する場面でもあります。

イエス様は、エルサレムの神殿の境内に入られ、辺りの様子をつぶさにご覧になられます。イエス様は、どのようなお気持ちでこの境内をご覧になられたのでしょう。私たちはここに心をしばらく留め、四旬節を締めくくる週としてイエス様の【受難と復活】をゆっくり黙想することができたらいいですね。

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