一粒の麦になるという種 四旬節第5主日(ヨハネ12・20〜33)

最近2本の映画を観ました。一つは、2015年にパリ行きの特急列車内で起きたテロ事件を扱った『15時17分、パリ行き』(2018年3月公開)という映画と、もう一つは、2013年にボストンマラソンのゴール付近で起きた爆弾テロ事件を扱った『ボストン ストロング』(2018年5月公開)という映画です。この2本の映画で共通するものは、主人公が、特別な人ではなく普通の人が自分の命を省みることなく、テロリストに対して向かって行く、ということです。まさに、きょうのみことばの【一粒の麦】の言葉を思い起こすことができる作品ではないでしょうか。

きょうのみことばは、イエス様がエルサレムにお入りになられ、ご自分の受難と復活を予告される場面です。みことばの始めにエルサレムに上ってきたギリシア人が「わたしたちはイエスにお目にかかりたいのですが」と弟子たちに取り次いでもらうところから始まります。このことは、私たちがイエス様に会う時、人を介して出会うということを表しているのではないでしょうか。例えば、周りの人と会話の中の言葉や行動によってイエス様からのメッセージをいただくともあることでしょう。また、そのことを通して「イエス様を感じている。イエス様と出逢っている」という【私】がいることに気がつく恵みを同時にいただくとことがあるのではないでしょうか。

イエス様は、ご自分の所にギリシア人が来たこと聞いて「人の子が栄光を受ける時が来た。」と言われます。この言葉は、イエス様のみことばがイスラエルの人だけではなく、異邦人、つまり「全世界に伝えられること」また、おん父のみ旨である「イエス様が十字架に掛けられ復活するその時がきたこと」を表しているのではないでしょうか。

イエス様は、続けて「よくよくあなた方に言っておく。もし一粒の麦が地に落ちて死ななければそれは一粒のままである。しかし、死ねば、豊かな実を結ぶ。自分の命を愛する者はそれを失い、この世で自分の命を憎む者は、それを保って永遠の命に至る。……わたしに仕えようとする者があれば、父は、その人を対セルにしてくださる。」と言われます。まず、イエス様は、これから大切なことを伝えることを人々に示され、それからご自分を【一粒の麦】としてたとえられます。イエス様は、ご自分がおん父のみ旨を実行する、つまり十字架上で死ぬ事によって人々の救いが実現すると言われておられます。この「自分の命を愛する者」というのは、私自身に固執する者ということではないでしょうか。イエス様は、私たちが自分の【エゴ】に縛られ、どうしても周りの人に心を向けたり、イエス様に心から向かったりすることができないとき、その人が固執しているものさえ失う。反対に、自分の【エゴ】に縛られることなく、たとえエゴが生じたとしてもその【エゴ】さえもイエス様に捧げる人、手放す人は、永遠の命に至る恵みをいただけることを約束されているのではないでしょうか。さらに、イエス様は、私たちがご自身のように【一粒の麦】となるとき、おん父も私たちを愛してくださるとお約束されます。私たちが固執しているものは、何なのか振り返ってみるのもいいかもしれません。

イエス様は、「今、わたしの心はかき乱されている。何と言おうか。『父よ、わたしをこの時から救ってください』と言おうか。いや、このために、この時のためにこそ、わたしは来たのである。父よ、み名の栄光を現してください」とおん父に祈られます。この箇所は、ヨハネ福音書の「ゲッセマネの祈り」と言われているようです。イエス様は、【今】のご自分の心の状態をしっかりと感じておられ、心の葛藤をおん父に祈られておられます。それでも、最後には、ご自分が受難と復活とによっておん父のみ旨を行うことで私たちを救うために来たのだと言われます。イエス様の「このために、この時のためにこそ、わたしは来たのである。」と言われた言葉の中には、イエス様のおん父への【従順】の心からの叫びのようです。私たちは、この言葉を味合うことでイエス様の私たちへの「いつくしみの愛」を感じることができるのではないでしょうか。

イエス様は、おん父が「わたしはすでに栄光を現したが再び栄光を現そう」と言われた後に、「今こそ、この世の裁きが行われる時。今、この世の支配者が追い出される。そして、わたしが地上から引き上げられとき、すべての人をわたしのもとに引き寄せる」とお約束されます。この言葉は、私たちに安心と希望を与えてくださるのではないでしょうか。イエス様は、「自分の命を愛する者」を裁かれ、反対に、ご自分に倣う者として【一粒の麦】になるとき、私たちをご自分のもとに、永遠の命に至ることをお約束されます。私たちは、イエス様に従う者、イエス様に呼ばれた者として、イエス様のご受難に心を合わせ永遠の命に向かう【一粒の麦】になる恵みをいただけたらいいですね。

映画『15時17分、パリ行き』オフィシャルサイト
映画『ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた』公式サイト

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