荒れ野という種 四旬節第1主日(マルコ1・12〜15)

誘惑は誰にでもあります。甘い物を好きな人が、医者から止められているのにもかかわらずついつい食べてしまう。また、依存症の方が抑える事が出来ずに苦しまれていることもあります。新聞に窃盗が依存となり何度も逮捕された人の記事が載っていました。彼は、「侵入方法を考えて現金の場所を想定し、その通りにできると何とも言えない達成感があった」と記者に語っています。最近では、衝動を抑えられずに盗みを繰り返す「窃盗症」の研究も進み、性犯罪や薬物など犯罪特性に応じた「改善指導」が刑務所内で行われているそうです。

このように小さな誘惑から犯罪につながるような誘惑まで私たちは様々な危険に陥る傾きがある弱さを持っています。人が誘惑に陥る時に起こる原因として「HALT」ということがあるそうです。「ハングリー」「アングリー」「ロンリー」「タイアド」の頭文字です。これは、肉体的また精神的なものでも当てはまるようです。自分では、どうすることもできない誘惑を三位一体の神の助けに委ねることができたらいいですね。

きょうのみことばは、イエス様がヨハネから洗礼を受けた後に荒れ野でサタンの試み受ける場面から始まります。みことばは「霊はただちにイエスを荒れ野に追いやった」という言葉から始まっています。ここで不思議なことに気がつきます。どうして【霊(聖霊)】がイエス様をわざわざ【荒れ野】に追いやったのでしょう。イエス様は、神の子ですから別に【荒れ野】に行ってサタンの試みに合わなくてもよかったのです。しかし、あえて【霊】がイエス様を【荒れ野】に追いやるのは、理由があるような気がいたします。イエス様は、神の子であると同時に人でもありますので、人としてのサタンの試みの苦しさ、辛さを身をもって味合われたのではないでしょうか。パウロの「キリストは神の身でありながら、神としてのあり方に固執しようとはせず、……その姿はまさに人間であり、死に至るまで、十字架の死に至るまで、へりくだって従うものとなられました。」(フィリピ2・6〜8)という言葉が思い出されます。

みことばの中の「ただちに」「追いやった」という言葉は、「(神である主は)人をエデンの園から追い出した」(創世記3・23)とある、アダムとエバが追放された時と同じ意味のようです。彼らは、自分の罪によって追い出されますが、イエス様は、おん父のみ旨に忠実に従われ、アダムとエバが犯した罪を贖うために、【霊】によって【荒れ野】に追いやられたのではないでしょうか。

さらに考えてみますと次の節と関係があるのかもしれません。それは、イエス様が宣教されたのは、「ヨハネが捕らえられた後」です。洗礼者ヨハネが【荒れ野】で人々に「罪の赦しへと導く悔い改めの洗礼を宣べ伝えていた」(マルコ1・4)ようにイエス様も「悔い改めて福音を信じなさい」と言われます。【荒れ野】で洗礼者ヨハネが「わたしより力のある方が、おいでになる。」と言って宣教し、その後イエス様が【荒れ野】から来られ、ガリラヤに現れ宣教を開始するというのも何か意味があるのかもしれません。

日本には、【荒れ野】がありません。ただ、【荒れ野】は「荒(すさ)んだ」「野」ですから、地理的な【荒れ野】はありませんが、人間関係の「荒み」、地域社会や格差社会の中での「荒み」、ニュースで流れてくる「目を覆いたくなるような、耳を疑うような事件」の人の心の「荒み」はあるのではないでしょうか。イエス様は、そのような【荒れ野】に【霊】によって追いやられ体験されたのです。イエス様は、神の子としての力を使ってサタンの試みを退けたりなさいませんでした。みことばの中には、書かれてはいませんが、40日の間試みられながら人として苦しまれ、悩まれ、人の弱さ脆さを体験されたのではないでしょうか。ただ、みことばは「み使たちがイエスに仕えていた」とありますので、イエス様は、ご自分だけではなく「み使い(天使)」の助け、と同時に【霊】の助けもあったのです。今の私たちはイエス様と違って、天使と共に三位一体の神の助けを頂きなが歩んでいると言ってもいいのではないでしょうか。

イエス様は、洗礼者ヨハネが捕らえられた後、ガリラヤに行かれ宣教を始められます。ガリラヤは、異邦人の地と言われエルサレムのユダヤ人たちから蔑まれた土地でした。イエス様の宣教は、人々から蔑められた土地から始まったのです。彼らは、自分たちがエルサレムの人々と違い罪人と思っていたのかもしれません。ですからイエス様の「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」という言葉は、彼らにとって「喜び」だったのではないでしょうか。

イエス様は、いつも「救い」を必要とした人の所へ真っ先に足を運ばれます。私たちは、イエス様の声に「信頼」と「喜び」を持って耳を傾け、味合い、イエス様の方に向きを変えながら、歩んで行くことができたらいいですね。 

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