証し人という種 待降節第3主日(ヨハネ1・6〜8、19〜28)

視覚障害を持つ方がマラソンをするときに「伴走者」と一緒に走ります。伴走者は競技者の側について走りながら走路や給水所やコースの状況などを知らせ、安全にゴールに導くのが役目です。この時伴走者と競技者は、息が合っていなければなりませんし、お互いの信頼関係も必要になってくるのです。もし、勝手に伴走者が競技者を誘導するとお互いのコミュニケーションは取れず、ゴールを目指すことも困難になります。

きょうのみことばは、洗礼者ヨハネの役割について書かれてある場面です。みことばの最初は「神から遣わされた方がいた。その名はヨハネである。この人は証しのために来た。光について証しをし、彼によってすべての人が信じるようになるためである。」という言葉から始まっています。ここに洗礼者ヨハネについて、「神から遣わされた人」と「光について証しする」と「すべての人が信じるようになる」という3つのポイントが書かれてあるようです。

洗礼者ヨハネは、「神から遣わされた人」だったのです。きょうのみことばの中には、「エルサレムのユダヤ人たちは、祭司やレビ人たちをヨハネの所に遣わして『あなたはどなたですか』と尋ねさせた。……遣わされた人々はファリサイ派に属していた。」というように「当時の権力者や人々を指導する立場の人」が洗礼者ヨハネのところに【遣わされます】。この人たちの関心は、「洗礼者ヨハネが何者であるのか」ということでした。それで彼らは、「あなたはどなたですか」とヨハネに尋ねますが、このことは、洗礼者ヨハネが「メシア」かどうかということでした。ヨハネは、それに対して「わたしはメシアではない」と断言します。彼らは、ヨハネのことをメシアだと思っていたのでした。マタイ福音書には、「ファリサイ派とサドカイ派の人々が、大勢洗礼を受けに来たのを見て、ヨハネは彼らに言った、『蝮の子孫よ、来るべき怒りから逃れるように、誰が教えたのか。』」(マタイ3・7)とあります。彼らは、ヨハネがメシアであったのなら洗礼を受け自分たちが救われようと思ったのでしょう。

彼らの関心であるヨハネがメシアであるかどうかということは、人々の救いではなく、【自分たちの救い】だったのではないでしょうか。エルサレムのユダヤ人というのは、当時のユダヤ教の権力者たちのことでした。彼らの間でも洗礼者ヨハネが何者であるか、もし彼が【メシア】であるならどのように立ち振る舞うべきかという政治的な権力やエゴから来るものもあったかもしれません。

それに対して、洗礼者ヨハネは、「『光』であるイエス様がこの世を照らす方」ということを「すべての人が信じるようになるために『証し』をするために【神から遣わされた】」のでした。洗礼者ヨハネにとって、大切なことは、自分の名誉や権力ではなく、ただ神から遣わされた使命に忠実であることだったのです。

洗礼者ヨハネは、祭司やレビがしつこく尋ねるので自分が何者なのかを伝え「わたしは、預言者イザヤが言ったように『〈主の道をまっすぐにせよ〉と、荒れ野に叫ぶ者の声』である」と答えます。ヨハネは、これから来られる「メシア」が進まれる「道」を整える者であり、すべての人がイエス様を「メシア」であると信じるようにと【証しする者】だったのです。彼は、あえて自分の言葉ではなく預言者イザヤの言葉を使います。ここに、ヨハネの謙遜さが表れているような気がいたします。「証し人」は「証しされる人」がどのような人なのか、どのような性格なのかということを分かっていなければなりません。また、「証しされる人」の意にそぐわないことや自分の意見を言っていては、「証し人」としての役目は務まりません。ヨハネは、自分の言葉ではなく「神から遣わされた人」として神からでた言葉である「みことば」を使って彼らに対して答えたのでした。

彼らは、洗礼者ヨハネが授けていた洗礼について質問をします。みことばには「あなたはメシアでもなく、エリアでもなく、あの預言者でもないのなら、なぜ洗礼を授けるのですか」とあります。彼らは、ヨハネが洗礼を授けることの責任について追求します。彼らは、宗教的な意味で人々を指導する立場の人だったのにもかかわらず、頭だけの質問をしていて【愛】の言葉ではありません。イエス様が彼らに対して「ヨハネの洗礼はどこからのものか。天からものか、人からのものか」(マタイ21・25)と祭司長や民の長老に質問したことがありますが、彼らは、ヨハネの洗礼についても疑問を持っていたのでしょう。

洗礼者ヨハネは、ユダヤ人たちの質問に対して自分がメシアではないことを伝えます。このことは、「まだ、メシア来られていない。これから来られる。」という意味でもあります。私たちは、待降節第3主日の典礼を迎えながらこれから来られる「メシア」であるイエスの忠実な「証し人」となることができたらいいですね。

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