使徒聖パウロ

私たち聖パウロ修道会の創立者アルベリオーネ神父は、2003年4月27日に列福されました。このアルベリオーネ神父が修道会の保護の聖人として選んだのが使徒聖パウロでした。使徒聖パウロは、一般の典礼暦では、6月29日に使徒聖ペトロと共に祝われますが、私たちの修道会では、その翌日6月30日に使徒聖パウロだけを別に祝います。そこで、今回は福者アルベリオーネ神父がどのようにパウロを理解し、生きたかということを、彼がしばしば引用していたパウロの言葉を読みながら、考えてみたいと思います。

アルベリオーネ神父が最もひんぱんに引用したパウロの言葉は、最初に記したガラテヤの信徒への手紙2章20節の言葉です。「生きているのは、もはやわたしではありません。キリストがわたしの内に生きておられるのです」。それと共に、同じガラテヤ書の「キリストがあなたたちの内に形づくられるまで」(4・ 19)という言葉も(しばしば文脈から切り離してでしたが)よく引用していました。

どちらの言葉にも共通するのは、キリストが私たちの中に入ってきて、成長してくださる、キリストが私たちの中で生き、働いてくださるという視点です。これは、私たちがキリストに学び、キリストに一致しよう、キリストに近づき、キリストに到達しようという「私たち」の行ないを中心とした視点とは異なり、キリストに中心を置いた視点です。

パウロは、教会の迫害者でしたが、このパウロに復活のキリストが現れました。パウロは自分でキリストを知ることはできませんでしたが、キリストが出現し、パウロの中に入り込んできてくださったおかげで、キリストを知りました。パウロの言葉を借りれば、パウロはキリストに捕らえられてしまったのです(フィリピ3・12参照)。

このように、パウロのキリストとの一致は、パウロ自身がキリストを学ぶ、身につけるというよりも、キリストがパウロに現れ、パウロの中に入り込み、徐々にパウロの中で生きるようになることによって実現されたものでした(もちろん、このためにパウロは最大限の働きをするのですが)。

ここに創立者はパウロの真髄を見て取りました。パウロがキリストの使徒(遣わされた者)として福音を宣教しているのですが、実はパウロの中でキリストが生き、考え、語り、働いておられるのです。だから、パウロのわざは、完全な意味で、遣わした方であるキリストのわざ(つまり「使徒職=遣わされた者として遣わした方のわざを行なうこと」)と言うことができるのです。

このパウロとキリストの関係は、ヨハネによる福音書に語られているキリストと御父の関係に似ています。キリストは御父に遣わされた者として、御父の言葉だけを語り、御父の望みだけを行なわれました。「わたしがあなたがたに言う言葉は、自分から話しているのではない。わたしの内におられる父が、そのわざを行っておられるのである」(ヨハネ14・10)。だから、キリストは弟子たちに「わたしを見た者は、父を見たのだ。なぜ、『わたしたちに御父をお示しください』と言うのか」(ヨハネ14・9)とまで言うことができたのです。

この言葉の意味を私たちはどれだけ感じ取っているでしょうか。たとえば、誰かが私たちにキリストについて教えてくださいと言ってきたら、私たちはその人に「なぜ、そんなことを言うのですか。私を見てください。私の生活、生き方を見てください。それがキリストなのですから」と言えるでしょうか。とても言える人はいないと思います。

しかし、パウロは表現こそ違え、この言葉を実際に口にしているのです。「わたしがキリストに倣う者であるように、あなたがたもこのわたしに倣う者となりなさい」(一コリント11・1)。私たちであれば、まず間違いなく、「わたしがキリストに倣う者であるように、あなたがたもキリストに倣う者となりなさい」と言うと思うのです。

福者アルベリオーネ神父は、パウロがこの言葉を言えたのは、パウロの中で完全にキリストが生きておられ、パウロの言葉を通してキリストが自らの言葉を語り、パウロの行ないを通してキリストが自らのわざを行なっていたからだ、と理解しました。パウロはキリストとのこのような一致を築き上げていたからこそ、キリストのわざ(=使徒職)を完全な意味で行なうことができたと考えたのです。この意味で、パウロはあらゆる「使徒」の模範であり、あらゆる「使徒職」の保護者なのです。

私たちも、キリストに従う者として、何らかの形でキリストに派遣された「使徒」と言うことができます。キリストは私たちを派遣するに際して、パウロに行なったのと同じように、まずご自身が私たち一人一人の中に入ってこられ、徐々に成長を続けておられます。ですから、私たちも自らの中に生きておられるキリストが成長できるように協力したいと思います。パウロの中でそうなさったように、私たちの中でもキリストが成熟し、そのわざを力強く成し遂げることができるようになる日を待ち望みながら……。

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