聖マチア使徒

5月14日は聖マチア使徒の祝日です。マチアという人は、他の使徒たちと異なり、イエスが十字架上で亡くなった後に使徒の仲間に加えられました。そのくだりが使徒言行録1章15〜26節に記されてあります。

十二使徒の一人であったイスカリオテのユダがイエスを裏切り、自ら命を断ちました。教会は、聖書の言葉に導かれて、だれか他の人がその務めを引き受けるべきであると判断しました。こうして選ばれたのがマチアです。そこで、今回は神の選びの神秘について考えてみたいと思います。

この箇所でまず私たちの目を引くのが、マチアは「くじ」によって選ばれたということです。今の私たちからすると、これほど重大なことをくじで決めるというのは、少し無責任な感じさえします。どちらがよりふさわしいか吟味した上でペトロが決めるとか、教会の中で選挙をするとか、他にもっと適切な方法があったようにも思えます。しかし、ペトロたちは、重大なことだからこそ、くじを使うことにしたのです。くじを使うことによって結果は人間の手から離れます。もはやだれも結果を左右することはできません。くじを使うとは、つまり、結果を完全に神に委ねることを意味します。ペトロたちは神の選びにすべてを任せるため、あえてくじを使ったのです。

さて、救いをこの世に証ししていくためには、さまざまな務めがあります。使徒たちの後継者である司教、それを助ける司祭、助祭、修道者、結婚を通して神の愛を証しする人たち、具体的に数え挙げていけばきりがないくらい、さまざまな務めがあります。私たちは、それぞれ自らの務めを持っています。しかしどうでしょうか。自分がこの務めを選んだと考えてはいないでしょうか。自分は何がしたいのかよく考え、この務めに自分がふさわしいかどうか熟慮に熟慮を重ねた上で選び取ったのだと考えてはいないでしょうか。しかしながら、そうではないことをマチアの選出の箇所ははっきりと教えてくれます。その人がこの務めを選んだのではなく、神がその人をこの使命のために選んでくださったのだ、と。

おもしろいことに、使徒言行録1章にはマチアの言葉はまったく記されていません。マチアが使徒となることを望んでいたのかどうか、使徒としてマチアは何をしようと考えていたのか、またマチアはどのような人であったのか、こうしたことは一切語られないのです。聖書は、神の選びにとってこれらのことが二次的なものにすぎないことを教えようとしているかのようです。 私たちの場合も、聖職者になるにせよ、修道者になるにせよ、結婚をするにせよ、あるいは他の道を歩むにせよ、大切なのは自分が望んでいるからその務めを引き受けるということではありません。自分がその務めにふさわしいかどうかということでもありません。いちばんたいせつなのは、神が選んで、その務めを果たせるようにしてくださったということなのです。

神の選びの不思議さは、マチアとともに候補者に立てられた「バルサバと呼ばれ、ユストともいうヨセフ」についても言えることです。使徒の候補者にまで立てられた人ですから、正しい人だったでしょうし、熱心な人だったでしょう。人望も厚かったことでしょう。教会の中で中心的な立場にあったことが容易に想像されます。にもかかわらず、これ以後、彼の名前は聖書に現れることがありません。使徒たちを補佐する奉仕者として選ばれた七人の「霊と知恵に満ちた評判の良い人」(使6章3節)の中にもヨセフの名前は出てきませんし、エルサレムの使徒会議の決定を伝える使者として選ばれたのも彼ではありませんでした(使 15章22節)。

神は、私たちの視点で人を選ばれるのではありません。私たちがすばらしいと思う人を神がお選びになるわけではありませんし、逆に私たちがどうしてこんな人をと思うような人が神に選ばれたりするのです。しかし、神はその人を選ばれた以上、務めを果たすための恵みと支えも与えてくださいます。しかも溢れんばかりに与えてくださいます。困難の中にあっても、行き詰まりを感じても、救いの喜びに満たされ続けるように神は支えてくださいます。自分の望みで選ぶのとは比べものにならないほどの恵みで、その人を満たしてくださいます。

マチアは使徒に選ばれました。では、私たちはそれぞれどんな務めに選ばれているでしょうか。神の選びに気づき、その務めを心から受け入れ、忠実に果 たしていくことができるよう、マチアの取り次ぎを願いたいと思います。

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