完全な者になるという種 年間第7主日(マタイ5・28〜48)

私たちは、時々不条理な扱いを受けることがあります。他人から、「どうしてそこまで自分のことを言われなければならないのか」、または、「こんなに、親切にしたのに裏切られなければならないのか」ということはないでしょうか。そのようは扱いをされたとき、私たちは相手に対して接したらいいのでしょう。

きょうのみことばは、「同害復讐法」と「敵を愛せよ」という教えをイエス様がさらに深く伝えられているところです。きょうのみことばも今までのように、イエス様の弟子たちになるためには、どのようにしたらいいのかを教えられます。この前の節は、どちらかというと私たちが相手に対して「罪を犯さないように」という注意を促す教えでした。しかし、きょうのみことばは、私たちが他人から受ける物事に対しての教えと言ってもいいのかもしれません。

イエス様は、「あなた方も聞いているとおり、『目には目を、歯には歯を』と命じられている。しかし、わたしはあなた方に言っておく。」と今までの律法の教えを人々に伝え始められます。この教えは、きっとイエス様について来た人々にとって、大変身近な教えだったのではないでしょうか。彼らは、どちらかというと、弱い立場の人々でしたから、周りの人から虐げられていました。ですから、この教えは、彼らを守るために大切な教えと言ってもいいでしょう。

この「目には目を、歯には歯を」という教えは、出エジプト記(21・24)に記されているもので、「相手の目を傷つけた場合、自分の目を持って、または、歯を傷つけた場合歯をも持って償う」という教えです。ですから、「やられたらやり返す」という意味とは、少し違うようです。イエス様は、それだけではなく、「悪人には逆らってはならない。右の頬を打つ者には、他の頬を向けなさい。……」といわれます。この言葉は人々にとってどのように響いたのでしょうか。たぶん彼らは、「冗談ではない。そんな教えなんて聞けるはずない」と憤慨したことでしょう。「悪人に逆らうな」ということは分かる気もしますが、「右の頬を打つ者には、他の頬を向けなさい。」という教えには、「どうして、そこまでしなければならないのか」と思ったに違いありません。この、「右の頬を打たれる」というのは、「手の甲で打たれる」ということで、大変屈辱的なことでした。同じように、「上着をもとらせる」や「無理にも1ミリオンを歩かせようとする者」に対しての教えも、屈辱的なことですし、まったく【不条理】な扱われ方と言っていいでしょう。しかし、イエス様は、それらの行いに対して、復讐心を起こさないようにと教えられさらに、「求める者には与えなさい。あなたから借りようとする者に背を向けてはならない」と教えられます。これは、相手に対しての【いつくしみの愛】と言ってもいいでしょう。

また、イエス様は、「……『あなたの隣人を愛し、敵を憎め』と命じられている。……あなた方の敵を愛し、迫害する者のために祈りなさい。」と教えられます。前の教えでは、理不尽で屈辱的な仕打ちに対して復讐心を持ってはならない、ということでした。しかし、今回の「敵を愛し、迫害する者のために祈りなさい」という教えは、「そこまでできるのだろうか」と人々は、思ったのではないでしょうか。これは、今の私たちも同じように思うことですし、イエス様の教えだと、頭で理解したとしても、いざ実行することは「無理」というのではないでしょうか。

イエス様は、その後に「それは、天におられる父の子となるためである。」と教えられます。イエス様の【受難】は、まさに、これらの屈辱的なものでしたし、不正な裁判という不条理なものでした。しかし、イエス様は、すべておん父のみ旨に忠実に果たされました。イエス様は、私たちが【おん父の子(神の子)】となるためには、これらのすべての苦しみを甘んじて受けるだけではなく、積極的に【いつくしみの愛】を実行しなさい、と言われているのではないでしょうか。

イエス様は、最後に「天の父が完全であるように、あなた方も完全な者になりなさい」と教えられます。私たちの目標は、天の国に入ることです。そのためには、おん父が私たちに遣わしてくださった、イエス様の生き方に倣うことではないでしょうか。パウロは、「わたしに倣いなさい。わたしもキリストに倣っているのです。」(1コリ11・1)と伝えています。このことは、私たちにとって、非常に高い目標と言えるかもしれません。しかし、パウロは、自分の力で「キリストに倣う」と伝えようとしたのではないと思うのです。私たちは、この高い目標に対して、【自分の力】という気持を捨てて、「【キリスト】と共に目標に向かって歩む」という気持に切り替えると楽になるのではないでしょうか。イエス様と共に歩む私たちは、きょうのみことばをゆっくり味わうことができたらいいですね。

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