ホーチミン共同体より 石水智道修道士

二〇一九年七月、共同体住居のリフォームを開始しました。修繕箇所は全部で六つ。屋根(雨漏対策)、台所と食堂(排気ガスと交通騒音の遮断、環境衛生)、聖堂(新しい聖櫃の設置、内壁塗装)、トイレ、バルコニー。工期は断続的に四カ月にわたって一斉に行われました。

それには理由がありました。それはイタリアから聖パウロ修道会の総長と総顧問が、ベトナム共同体を訪問することになっていたからです。

そして十月、総長ヴァルディル神父と総顧問ダルレイ修道士は、ホーチミン空港に降り立ちました。ベトナムの準志願者たちは、はるばるイタリアから来られた二人に、花束をプレゼントして歓迎しました。

総長たちは三日間滞在し、主な予定は、準志願者たちと日本人会員との面談、共同体住居のオーナーとの面会、聖マリア大聖堂と教会ショップの訪問がありました。

準志願者との面談では、彼らは、準志願者の一人ひとりと対話し、意見を伝え合いました。また夕食を共にした時は、年齢や立場の隔たりもなく、賑やかに楽しいひと時を過ごしました。

翌日、ホーチミン市の聖マリア大聖堂とキリスト教ショップを訪れ、使徒職にも関わる書籍や聖品を見学されました。

そして最終日、二人がベトナムを去る時、絵を描くのが上手な準志願者の一人が、総長と総顧問に似顔絵を描いてプレゼントしました。本当にそっくりでした。

三日間はあっと言う間でしたが、準志願者たちは、聖パウロ会の総長たちに会えたことを喜び、また総長たちも準志願者たちの若さとエネルギーを肌で感じて、未来のベトナムのパウロ会に、希望を抱かれたようでした。きっと双方にとっても貴重な機会だったと思います。

最後は、そんな大切な場に派遣されているはずの私自身のことです。ベトナムに来て一年が経つというのに、準志願者たちとのコミュニケーションも今一つで、戸外においても社交的に振る舞うことが苦手でいました。

このままでは良くないと思い、解決策を探すために『なぜか子どもが心を閉ざす親 開く親』(加藤諦三著、青春出版社)を読みました。その本で目に留まったのが「信頼関係づ<りの大切さ」でした。小さい信頼関係の積み重ねが子どもの心を開き、親に本音が言える関係をつくる。そして子どもは癒される、ということでした。

そう言えば院長さんは、準志願者たちに、大事な事を話す一方で雑談もあったり、とにかく彼らにいつも声掛けしているような印象でした。つまり、院長さんが普段やっている日常会話こそ、信頼関係を築く大事な要素だったのです。

それに気づいた私は、院長さんと同じことは出来ないけれど、姿勢だけは見習って、自分なりに何ができるかを考えました。そして今できることは、食卓を囲む中で、彼らの意見に耳を傾けること、それに対して自分が発言できる時は話しかけること。話題が作れなかったり、話し掛けるのが難しかったら、院長さんの話に乗っかって、頷いたり、相槌をうったり、笑うように心掛けたり、一言だけでも意見を言ったりして、自分の会話のハードルを下げることにしたのです。

そしてそれを実践したら、以前より会話することが易しく感じられ、気持ちも軽くなり、自然と表情も明る<柔らかくなったような気がしました。私にとってこれは大きなことで、頭と心で納得できたことも喜びでした。そして志願者たちも以前より私と話しやすそうでした。

だからこれからも「信頼関係づくり」の大切さを忘れず、日々実践できるよう頑張りたいです。そして彼らが日本語検定試験N3に合格してベトナムを発つ時、彼らとの信頼関係が強まっていれば、より安心して彼らを日本へ送り出せると思います。

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