悪人にも善人にも… 年間第7主日(マタイ5・38~48)

同害復讐法は、被害者が加害者に対して、憎しみのあまり、過剰な報復に走ることを抑止するために設けられた規定です。これはイスラエルに限らず、古代社会での基本的なルールとして使われていたものでした。「目には目を、歯には歯を」は、古代オリエントの成文法典である「ハムラビ法典」の中にも出てくるほどです。これと似たような内容は、出21・24、申19・21、レビ24・20にも出てきます。江戸時代に、「仇討ち」というものが適用されていましたが、これに類するものでしょう。ところがイエスは、「右の頬を打つ者には、ほかの頬を向けなさい」(マタ5・39)と語ります。打たれても屈しないこと、そして報復の権利を放棄することが、悪に勝つ道であることをイエスは説いていきます。同時に裁きの権利を神に返すことでもありました。

また「下着を取り上げようとする者には、上着をも取らせなさい」(マタ5・40)とイエスは語ります。常識で考えてみると、下着を取るためには、まず上着を取らなければなりません。ここでイエスが語りたいことは、上着は下着よりも貴重であるので、裁判で相手が下着を取ろうとするのであれば、上着をも与えなさいという、心の広さや寛大さを意味します。これと並行箇所のルカ6・29では、持ち物を奪おうとする者のケースなので、「上着を奪う者には、下着をも拒んではならない」となっています。背景とする意味の違いが分かるのではないでしょうか。まさにルカ福音書では「奪う」というところに力点が置かれています。

また「天の父は悪人の上にも善人の上にも太陽を昇らせ、正しい者の上にも、正しくない者の上にも雨を降らせてくださる」(5・45)と。イエスにとって、隣人、敵の区別がなく、善人・悪人の区別を超えています。人間にとって不公平に思う神こそが、すべての人を救う「父」であり、ここに「無償の愛」の源泉が見えてきます。

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