神の子になるという種 主の洗礼(マタイ3・13〜17)

「洗礼の恵み」とは、私たちにとってどのようなことなのでしょうか。洗礼には、大きく分けて【幼児洗礼】と【成人洗礼】の洗礼があります。どちらの【洗礼】もそれぞれの良さがあるような気がいたします。きょうのミサの中で司祭は、「洗礼によって新たに生まれ、あなたの子どもとされたわたしたちが、いつもみ心に従うことができますように。」と唱えます。洗礼の恵みは、私たちが「新たに生まれる」ことと「あなたの子ども(神の子)」となるということではないでしょうか。

きょうのみことばは、イエス様がヨルダン川で洗礼者ヨハネから洗礼を授かる場面です。イエス様は、多くの人々(マタイ3・5〜6)とともにガリラヤから洗礼者ヨハネがいるヨルダン川に来られます。しかし、洗礼者ヨハネは、「わたしこそあなたから洗礼を受けるべきです。あなたがわたしのもとにおいでになったのですか」と言って、自分からイエス様が洗礼を受けることを思い留まらせようとします。洗礼者ヨハネにとってイエス様は、「わたしより力がある方で、わたしはその方の履き物をお脱がせする資格もない。その方は聖霊と火で、あなた方に洗礼をお授けになる」(マタイ3・11)とみことばにあるように、主人と奴隷以下の差、雲の上の方ということ知っていました。

洗礼者ヨハネは、イエス様に授けるよりむしろ彼自身の方が、イエス様から「聖霊と火」での洗礼を授けられたいくらいだったことでしょう。洗礼者ヨハネは、謙遜な人でしたから自分が人々に授ける【洗礼】が、「水」によるもので悔い改めの洗礼を授けるものということを知っていたのです。しかし、イエス様は、もうすでに神の子でありますので「悔い改める」必要はありませんでした。さらに、「聖霊と火」で洗礼を授けることができることができるお方に、「水」で洗礼を授けるなんてとんでもないことと思っていたのではないでしょうか。洗礼者ヨハネにとってイエス様に洗礼を授けることは、ことわざで言うのでしたら、「釈迦に説法」以上の出来事と言ってもいいでしょう。

そのように戸惑っている洗礼者ヨハネにイエス様は、「今は、止めないでほしい。このように、なすべきことを果たすのは、わたしたちにふさわしいことだから」と言われます。これを聞いた洗礼者ヨハネは、「イエス様は何を言われているのだろうと」もっと戸惑ったのではないでしょうか。イエス様は、洗礼者ヨハネが必死になってご自分に洗礼を授けることを思い留まらせようとしていることに対して「今は、止めないでほしい」と言われ、「あなたが言いたいことは、わかっているよ。」と彼の気持ちを受け入れられ、「でもね、止めないで、『私はあなたから洗礼を受けなければならない』のだから」と言われているようです。

さらにイエス様は、この洗礼が「わたしたちにふさわしいことだから」と言われます。この「わたしたちにふさわしい」の【わたしたち】とは、誰のことを意味しているのでしょうか。この会話は、イエス様と洗礼者ヨハネだけですから、彼ら【二人】ということになるでしょう。イエス様が洗礼者ヨハネから洗礼を受けることは、おん父のご計画ですから、そのみ旨に従うことがふさわしいことですという意味にも取られます。イエス様は、いつもおん父のご計画に忠実でしたし、イエス様がお生まれになったのもマリア様が「お言葉どおり、この身になりますように」(ルカ1・38)という言葉からでしたし、ご自分の「受難の死と復活」もおん父のみ旨を忠実に果たされました。イエス様が洗礼者ヨハネから洗礼を授かるということも、おん父のみ旨に忠実に果たされるためと言っていいでしょう。

もう一つの「わたしたち」もあるのかもしれません。それは、エルサレムやユダヤ全土から来た人たち(マタイ3・5)の中にイエス様ご自身も含む「わたしたち」という意味です。イエス様は、「み言葉は人間となり、われわれの間に住むようになった」(ヨハネ1・14)とありますように、イエス様は、【神の子】でありますが、【人の子】でもあるのです。イエス様は、遜(へりくだ)られてご自分も【人】として洗礼を受けられたのではないでしょうか。

洗礼を受けられたイエス様は、神の霊が鳩のようにご自分の上に降ってくるのをご覧になり、「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」とおん父と聖霊の祝福をいただきます。おん父は、そこにいた洗礼者ヨハネや大勢の人々に対してイエス様がご自分の子、【神の子】であることを示されたのではないでしょうか。また、おん父は、人として遜り、ご自分のみ旨を忠実に果たされたイエス様への祝福の意味もあるのかもしれません。

洗礼は、イエス様が人として生まれ、おん父が神の子と公に表されたように、人である私たちが【神の子】として新たに生まれるという【恵み】をいただくことではないでしょうか。きょうのみことばを通して【洗礼】の恵みを振り返り、「おん父の祝福によって新しく生まれ変えられた【私】」がおん父のみ旨を忠実に果たす恵みをいただくことができたらいいですね。

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