あの夏の約束 レ・ヴァン・ビエン志願者

日本に来たビエンと申します。明るい空、セミの声に夏の兆しを感じています。私の部屋から日が沈むのを見ると、ベトナムの夏を懐かしく思い出します。

ベトナムの学生の夏休みは、五月の下旬から八月一杯にかけて長い期間あります。しかし高校三年生は違います。夏になると期末試験がり、そして大学入試があるからです。すべての高校生はいい大学に入るために一緒懸命勉強しないといけません。私も同じ時間を過ごしていました。しかし、一方で、私の召命の原点はこの大学入試の準備の時、師イエス・キリストに祈ったことにあるように思います。

〝主よ、もし大学に合格したら、あなたの司祭になります〟とお願いしました。振り返ってみると、なぜ、そんなことを神さまに願ったのか分かりませんでした。

勉強が忙しくて司祭になることなどまったく気にしていませんでしたが、合格通知書を受け取ったときに、ふと神さまとの約束を思い出しました。約束はどうしよう、学生と司祭、どちらがいいのか分からなくなっていました。嬉しい顔と不安な顔とがありました。そんな気持ちのまま入学しました。両親を離れて自由を満喫し、やりたいことをやり、行きたいところに行き、大学生活を楽しく、思い通りに暮らしていましたが、ある日心の深い所から、小さい声が聞こえてきました。

〝お前は私との約束を忘れるのか〟という声です。

それから、その小さな声は毎日、何度も繰り返されました。道に迷わないように、正しい道を選択するための声だったと思います。

司祭になる道を選べば好きなことを控えないといけません。大学生活が始まったばかりなので、いろんなことを諦めたくないと思いました。

〝主よ、約束を変更することができますか。できないなら時間をいただけませんか。よろしいですか〟

もう一度別の約束をしたいなあと思っていたころ、ある日のミサの福音で〝あなたが私を選んだのではない、私があなたを選びました〟と聞きました。心がすごく驚かされ、涙も出てきました。なぜ神さまは私を選ぶのか。私は罪を犯し、約束を守らない普通の人間です。それなのに、呼ばれたことが本当に不思議なことだと思います。聖堂を出ると夏の風が吹いていました。その夏、私は進路を変更して主の道を歩み始めました。

それからいくつもの夏を過ごしましたが、あの夏の記憶を忘れることがありません。今、日本での夏を迎えようとしています。神さまの招きは不思議なものです。選ぶのは私ではなくて神さまです。神さまの呼びかけを悟るために心の動きに注意するのは大切です。心を開き、沈黙を守ることも重要です。今、心は本当に穏やかです。平和な顔で自然の風を迎え、鳥、セミの声も心地よく耳に入ってきます。

私の召命の出発点は神さまとの約束です。皆さんも出発点があります。それぞれ違うと思います。どんな道でも神さまがくださる贈り物です。神さまは私を選びました。私に愛を注いでくれました。夢を実現するのは自分の力だけできませんが、神さまのお恵みによって出来ると私は信じています。

『希望の丘 75号』より

あなたにオススメ