笑顔にする財産という種 年間第18主日(ルカ12・13〜21)

『ブラザーサン・シスタームーン』という映画の中で、戦争から帰ってきたフランシスコが自分の家の物を窓から外に出し、最後は裸で家を出て行くシーンがあります。きょうのみことばを味わう時、この場面が思い出します。

きょうのみことばは、財産についてイエス様が警告する場面です。財産分与については、昔も今も変わらずいろいろ問題が起こるようです。ルカ福音書の中には、もう一つ財産分与について書かれた箇所があります。それは、弟が父親に自分が相続する財産を譲り受け、放蕩に身を持ち崩して、財産を無駄遣いしてしまうという『放蕩息子の喩え話』(15・11〜32)です。ここでは、おん父の「いつくしみの愛」について語られています。きょうの箇所では、同じようにおん父の「いつくしみの愛」ですが、特にどのような生き方をすれば、天の国に入ることができるかということを伝えているようです。

ユダヤ人たちは、財産があるということは、神からの恵みだと考えらえていたようです。そのため、「金持ちが神の国に入るよりは、らくだが針の穴を通る方がもっと易しい」とイエス様が言われた時に人々が「それでは、いったい誰が救われるのだろうか」と驚く場面があります(ルカ18・24〜26)。イエス様は、それまでユダヤ人たちが当たり前のように財産を豊かにすることだけを大切にしていた考えを指摘します。

きょうの箇所で出てくる青年もやはり自分の財産が豊かになることを望んでいました。彼は、イエス様に「先生、遺産をわたしに分けるよう、兄弟におっしゃってください」と言います。イエス様は、彼に対して「友よ、誰が、わたしをあなた方の裁判官、また仲裁者に立てたのか」と言われます。ここでイエス様は、彼のことを「友よ」と言われます。このことから彼とイエス様との関係は、親しかったようです。そのため彼は、イエス様だったら自分たちの問題について解決してくださるだろうと、思い相談したのかもしれません。しかし、イエス様は、彼に「わたしはあなた方の裁判官、また仲裁者ではありませんよ」と言われます。イエス様は、彼を叱っているのではなく、「そのような相談だったら律法学者に相談してください、私はあなたにもっと他にも伝えなければならない大切なことがあります」と言われているのではないでしょうか。

イエス様は、周りの人に「あらゆる貪欲に気をつけ、用心しなさい。人の命は、財産の多さによるものではないからである。」と言われます。イエス様は、彼が自分の財産を増やすことだけに固執している貪欲さの危険性を指摘すると同時に、周りの人に対しても警告されます。イエス様は、ここであえて「あらゆる」と付け加えられます。【貪欲】というのは、財産だけに限らず、私たちの【欲】に対してのことを言われているのではないでしょうか。私たちにとって【欲】は大切なことです。例えば、食欲がなければ生きていけません、学習欲がなければ学ぶことができません。イエス様は、【欲】にとらわれることを指摘しているようです。私たちは、何か一つのものを手に入れると、また別のものを欲しくなるという傾きがあります。イエス様は、この【欲】を満たすことで、いつの間にか周りが見えなくなったり、最初は小さな【欲】であっても、だんだん大きくなったりする危険性を指摘しているのではないでしょうか。

イエス様は、「人の命は、財産の多さによるものではないからである。」と言われた後に『金持ちの喩え話』をされます。イエス様は始めから「ある金持ちの畑が豊かに実った。」と言われこの人がすでに多くの財産を持っていることを伝えます。にも関わらず彼は、すでに持っている倉を壊してさらに大きな倉を建て、作物や貴重品をしまっておこうという算段を立てます。このように、人の心の中には、【貪欲】という厄介な【欲】があるのです。イエス様は、彼に「そして自分自身に言おう。……さあ休んで、食べたり飲んだりして楽しめ」と心の中で言わせます。彼は自分が得た【実り】を自分だけのものにしようと考えます。彼にとっては、周りの人がどうであろうと関係がありません。彼は、長い歳月を過ごせるだけの財産があり、悠々自適に過ごすことができ、何の心配もなく余生を過ごすことができるのです。

イエス様は、神が彼に「愚か者、今夜、お前の命は取り上げられる。そうすれば、お前が蓄えた物は、いったい誰のものになるのか」と言われて喩え話しを結ばれます。イエス様は、「自分のために宝を蓄えても、神の前に豊かにならない者は、このようになる」と言われます。私たちにとって【神の前で豊かになる】ということはどのようなことでしょうか。それは、イエス様が言われる「自分のため」ということではなく「人のため」に宝を蓄えるということではないでしょうか。私たちは、財産だけに限らず、才能や能力、人柄や性格、健康など【私】の全てを、おん父から頂いています。私たちは、おん父から頂いている【この全て】を使って周りの人が笑顔になるような【財産】を蓄えることができたらいいですね。

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