『がんと生きる 言葉の処方箋』:ブラザーが選ぶ!おすすめ映画

医学と哲学を結びつけることを考えていた経緯から、がん患者の悩みや不安を軽減できる場として「がん哲学外来」を開設した順天堂大学医学部教授、樋野興夫に共鳴した4人の主人公が開いた「メディカル・カフェ」を描いたドキュメンタリー映画。

樋野先生は、数々の講演やがん患者や家族の悩みに耳を傾ける。がんを宣告されこれからの治療に悩む患者や家族に、「全力を尽くして、心の中でそっと心配する。どうせなるようにしかならない」と声をかける。患者は、不安ながらも樋野先生と話すうちに自然と笑顔に変わっていく。樋野先生は「問題は、寿命の長さではなく何をしたか。自分が感じ、言葉にしたものを5つほど並べると、一つくらいはあたる。これが『言葉の処方箋』。無料だよ。副作用ゼロ」と言う。この言葉の処方箋は、映画の中の4人の主人公が開く「メディカル・カフェ」の中で生き続け、受け継がれていく。

がんを体験した春日井いつさんは、絶望の中で樋野先生と出会い、「使命感があれば寿命は延びる」という言葉をいただき、地元千葉県流山でメディカル・カフェ「ながれやま・がん哲学外来カフェ」を開設する。春日井さんは「メディカル・カフェが、人生を考えるひと時となればいい」と伝え、がんで苦しむ患者やその家族の悩みを聞く。がん患者の一人は、合唱団で歌った第九を披露し、がんを患っている苦しみ、不安な空気が和む。

福井県済生会病院で消化器外科医として働く宗本義則医師は、がんが、外科手術だけでは太刀打ちできないという限界を知り、「がん哲学外来」と出会い病院内に「メディカル・カフェ」を開設する。映画の中では、患者の1人は、「1年のしか生きられないと言われ、1年10か月が過ぎた。そうするともう少し生きてみようという勇気が湧いてくる」と笑みを浮かべながら語る。そんな姿をみるとき、映画を見ている方まで、1年1年をしっかり生きていこうという気持ちになる。宗本医師は「いい人生だったか、悪い人生だったかは最後の5年間で決まる」という。彼の中にも樋野先生の「言葉の処方箋」が生きているのだ。

長野県松本市で乳がんサバイバーのシングルマザー齋藤智恵美さんは、5歳になる一人息子しゅん君を残しては死ぬわけにはいけないという思いで、「松本がん哲学カフェ」を開く。息子を幼稚園に預けた後は、ヘルパーとして同じくがんにかかり一人暮らしのおばあちゃんの家に行く。彼女は「齋藤さんは、最高のヘルパーだよ。同じ病気をしているのでわかる。人生1回だからもっと楽しんで」と言葉をかけられる場面もあった。

彼女は、「がんは、自分の細胞だし、グレた不良息子のようなもの。がんの治療をどうこうというよりも、がんと共に生きたらいいのかを考えていきたい。そんな思いで、彼女は、月1回の「メディカル・カフェ」を開く。彼女は、「ここでは、がんの治療のアドバイスや意見交換をするところではなく、一人一人の思いを話すところ」と言ってカフェが始まる。一人の女性は、自分の東京に住む息子が40歳でがんになり罹ったと言う。長野と東京と離れていて何もしてあげることができないことに涙を流して話される。そんな彼女に齋藤さんは、「解決はできなくても。解消はできる」と語る。

8歳の時に脳腫瘍にかかり、14歳の時に再発し名古屋に住む現在高校1年生の中村航大君は、入院中に樋野先生に出会い、仲間の同級生と共に「どあらっこメディカル・カフェ」を開設する。彼は、「自分と同じようにがんで苦しむ子供たちのために何かがしたい」と言う。彼は、「がんと聞くと、マイナスのイメージがあるが、マイナスとマイナスをカケルとプラスになる。」とカフェに集まった人に語る。彼の前向きな生き方に、カフェに参加した人たちにも笑顔がこぼれる。

樋野先生は、「過去のことを振り返っても、明日のことを思い煩っても人間は、コントロールできないことがある。毎日毎日を全力を尽くすことしかない。天寿を全うしてがんで亡くなるというか、そういう意味での死というか、死という大切な仕事が残っている。」と語られる。この映画に出てきた4人の主人公は、それぞれの立場や場所で精いっぱい使命を持って生きている。今、がんで苦しんでいる人とその家族、医療関係者や介護者がこの映画を見て「言葉の処方箋」で自分自身、また、周りの人に笑顔が与えられたらと思う。

©2018がん哲学外来映画製作委員会


『がんと生きる 言葉の処方箋』
2019年5月3日(金)より新宿武蔵野館、5月11日(土)よりシネマスコーレ(名古屋)、6月8日(土)より第七藝術劇場(大阪)、6月15日(土)より京都シネマで公開
※上映時間など詳細については各映画館にご確認ください。
監督:野澤和之
プロデューサー:田寺順史郎
協力プロデューサー:並木秀夫、上田幸伺、青柳志保
主演:樋野興夫:宗本義則、春日井いつ子、齋藤智恵美、中村航大
配給:がん哲学外来映画製作委員会
時間:90分
2018/日本
©2018がん哲学外来映画製作委員会
公式サイト:https://kotobanosyohousen.wixsite.com/website

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