敵を愛するという種 年間第7主日(ルカ6・27〜38)

私たちの歩みの中で、コミュニケーションの不足や誤解から人間関係が気まずくなること、理不尽な言いがかりや仕打ちを受けたことがあるかもしれません。そのような時、私たちは、怒りや悲しみという苦しさが起こることでしょう。そして「なぜ、このようなことが起こるのか。どうしてここまで言われなければならないのか」と思うのではないでしょうか。イエス様は、私たちが経験するかもしれないその苦しみを、ご自分の身をもってお受けになられました。きょうのみことばは、私たちが人との関係での苦しみを通して天の国への希望を黙想するヒントになるかもしれません。

きょうのみことばは、イエス様の「しかし、わたしは耳を傾けているあなた方に言う。敵を愛し、あなた方を憎む者に善を行いなさい」という言葉から始まっています。イエス様の周りには、弟子と共にイエス様の教えや癒しを求めて集まってきた多くの人々がいました。イエス様は、彼らに向かってご自分に耳を傾けている人、教えを聞きにきた人、今の生活から変わりたいと思っている人に対して【おん父の深い愛】を伝えようとされているようです。

人々にとってイエス様の「敵を愛し、あなた方を憎む者に善を行え」と言う教えは、衝撃的な新しい掟として響いてきたのではないでしょうか。ユダヤ人たちは、「あなた方も聞いているとおり、『あなたの隣人を愛し、敵を憎め』と命じられている」(マタイ5・43)とマタイ福音書に書かれてあるように、「敵に対しては、愛するのではなく憎みなさい」と教えられていました。しかし、イエス様の教えは、全く逆でした。さらに、それだけではなく「呪う者を祝福し、あなた方を侮辱する者のために祈りなさい」と言われます。ユダヤ人にとってイエス様の教えは、今まで聞いたことがない、むしろ「そんなことはできない」と言うものだったに違いありません。

イエス様のところに集まってきた人は、人間関係において疲れ、傷ついた人、病気や貧しさから搾取され、周りの人から罪人と言われた人たちもいたことでしょう。彼らは、自分の人生を嘆き、せめて普通の生活をしたいと思っていたのではないでしょうか。イエス様は、彼らに対して自分たちを苦しめ、侮辱している人のために「祝福し、祈りなさい」と教えられます。

イエス様は、「あなたの頬を打つ者に、もう一方の頬を向けなさい。上着を奪う者には、下着をも拒んではならない。」と言われます。この状況は、最初に頬を打たれる時には、手のひらで打たれ、さらにもう一方の頬を向けるときに打たれるのは、手の甲で打たれるのです。これは、ただ暴力を振るわれるということではなく、「手の甲で打たれる」というのは、その人に対して【軽蔑】を表す意味だったのです。また、自分が着ているものさえも奪われることもそれを甘んじて受けなさい、と言われます。それを聞いた人々は、自分たちが今まで教えられたこととの大きな違いに戸惑ったに違いありません。イエス様は、「敵を愛する」ということは、精神的な痛み、苦しみだけではなく、自分が所有しているものまで与えなさい、と言われています。

イエス様は、さらに「あなた方を愛する人を愛したからといって、何の恵みがあるだろうか。罪人でさえ、自分を愛する人を愛している。……しかし、あなた方はあなた方の敵を愛しなさい。人に善を行いなさい。また、何もあてにしないで貸しなさい。」と言われます。イエス様は、「愛すること」、「善を行うこと」、「人に貸すこと」を何かの見返りを求めるのではなく誰に対しても同じように行いなさい、と教えられるのです。このことは、イエス様が私たちの模範としてなさったことです。イエス様の愛は、私たちの常識で考えることができないほど寛大なものです。私たちは、この愛をいただいていることに気づくとき、人に対しても同じことができるのかもしれません。イエス様は、「そうすれば、あなた方の報いは大きく、あなた方は、いと高き方の子らとなる。」と言われます。イエス様は、ご自分が教えられた「無条件で敵を愛する」ということを私たちが行うとき、天の国に入ることができるとお約束されます。

イエス様は、「あなた方の父が憐れみ深いように、あなた方も憐れみ深い者になりなさい」と言われた後に「人を裁いてはならない」と続けられます。イエス様は、私たちに侮辱や軽蔑を与えた人に対して赦しなさいと言われます。イエス様は、おん父の愛は私たちが人を赦すことの報いとして「溢れるほど升の量りをよくして、あなた方のふところに入れてもらえる」そのくらい寛大なものであると教えられます。イエス様は、私たちに「おん父の愛に倣う者となってください」と言われているのではないでしょうか。

きょうのみことばは、私たちに対してかなり苦しく、厳しい教えです。そればかりか、私たちの常識を覆す教えと言えるでしょう。私たちは、三位一体の神の愛の深さ、憐れみを改めて感じ、少しでも「敵を愛する」ことを振り返ってみることができたらいいですね。

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