『盆唄』:ブラザーが選ぶ!おすすめ映画

2011年の東日本大震災と続く福島第一原発事故により、福島県双葉町の人々は、避難生活を余儀なくされた。その中の1人、横山久勝さんは、子供の頃から音楽と祭りが好きで、自己流で太鼓を作り「双葉盆唄」をこよなく愛し、先祖代々唄い続けてきた双葉盆唄の存続の危機を悲しんでいた。もちろん、そう思うのは、彼だけではなかったのである。彼の声かけで以前の仲間が4年ぶりに集まったが、歌い手は声が出ず、笛の名手も音が出ない。

そんな中、横山さんは、ハワイの日系人文化を記録していた写真家岩根愛さんと知り合い、ハワイのマウイ島に移民した日系人たちが「ボンダンス」と言って「フクシマオンド」が今も生きているということを知る。これを機会に、横山さんと仲間でハワイに飛び、そこで彼らが日本人よりも、日本人らしく「盆踊り」を唄い、太鼓を打ち、笛を吹いているのに感動する。それもそのはず、移民たちにとって、日本に帰りたくても帰ることができなかった先祖たちの魂を慰める、大切な「ボンダンス」だったのである。横山さんたちは、彼らの気持ちと、帰還困難区域となって帰ることができない「双葉町」への思いが重なる。

もう一つ、双葉町には悲しい歴史があった。それは、今から遡ること200年前、富士山の噴火、浅間山の噴火のため、相馬地域の田畑にも影響が出て、大凶作と疫病のために多くの死者が出てしまう。そのため、福島の殿様は、富山からの移住者を募る。彼らは、「相馬移民」と呼ばれるようになり、土地と農機具を貸し与えられ、田畑で身を粉にして働いてようやく豊かな実りを得ることができるようになった。しかし、それまでは、地元民からのいじめや、迫害に耐える日々を余儀なくされたのであった。

2018年夏。横山さんと数人の仲間は、同じ地域に住む他の双葉町の人々に声をかけ、震災後初めての「双葉盆唄」の開催を企画するのであった。当日、広場では、やぐらが組まれ、ぼんぼんりに明かりが灯され、太鼓や笛、そして唄が流れる。横山さんは「ご先祖様、震災で亡くなられた皆様、一緒に踊ってください」という。

この映画は、「盆唄」を題材にして、双葉町、ハワイ、そして富山とそれぞれの人の魂の物語でもある。もっと、深く掘り下げると私たちの先祖、今、そして未来へと向かう何世代先への「希望」の映画とも言えるのではないだろうか。監督は、『ナビィの恋』『ホテル・ハイビスカス』など9作のドキュメンタリー映画を手がけた中江裕司。今作品も3年間の歳月をかけ、彼らの「盆唄」への思いを撮っている。134分という映画であるが、なかなかどうして、時間を感じさせない映画である。

©2018テレコムスタッフ


『盆唄』
2019年2月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー! フォーラム福島、まちポレいわきも同時公開!
監督:中江裕司(『ナビィの恋』『ホテル・ハイビスカス』)  
撮影監督:平林聡一郎
編集:宮島竜治、菊池智美
エグゼクティブプロデューサー:岡部憲治
プロデューサー:堀内史子
アソシエイトプロデューサー:岩根愛
アニメーション:池亜佐美
音楽:田中拓人
音楽プロデューサー:佐々木次彦
出演:福島県双葉町の皆さん、マウイ太鼓ほか
声の出演(アニメ―ション):余貴美子、柄本明、村上淳、和田聰宏、桜庭梨那、小柴亮太
製作:テレコムスタッフ
配給:ビターズ・エンド
時間:134分
2018/日本
©2018テレコムスタッフ
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/bon-uta/

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