御手の中で 大西徳明神学生

オーストラリア地区について分かち合いたいと思います。現在会員は八名。二名がオーストラリア人、二名がインドから、コロンビア、ブラジル、フィリピンからそれぞれ一名。そして日本からの留学生一名で構成されています。うち、一名がブリスベンで書店使徒職に従事し、残りがシドニーで共同生活を行っております。ちなみに、インド、ブラジル、コロンビア、フィリピンと言った国はパウロ会内でも最大規模の会員数を誇りますので、それぞれが「自分たちのやり方、あり方、使徒職、養成こそが至高なのだ」と考えているフシがありますので、時として対立もありますが、対立が起きるだけ健全な共同体だと個人的には思っております。

使徒職に関しては、販売、企画、出版と幅広く手がけております。かつては印刷も手がけておりましたが、人員不足と修道院が位置する場所が住宅街に指定されることを契機に廃止したそうです。それぞれの長所を生かしながら、インドやフィリピンからも多くの書籍を輸入したり、また執筆を頼んだりしているようです。地区の長であるマイケル神父様がアメリカから帰国してからは、地元の人脈を生かした出版活動も活発的になってきました。また、世界中の英語圏の出版物を扱うことになりますので、毎週イギリスやアメリカから大きなコンテナが届いてきます。ところで、この夏(そちらで言うと冬ですけれども)シドニー郊外にありますパラマタ市の書店を閉じることになりました。理由は簡単で、「十年後に、今ある形でこの国に本屋が残っているとは考えにくい」というもので、それだけオーストラリアは国を挙げてデジタル化を進めていこうといった風潮です。わたくしが通っております私立の大学(研究所)も、来季よりすべての配布物をデジタルに切り替えるということでした。かつては授業中に電子タブレットをいじるなどは失礼千万でしたが、もう当たり前の光景になりつつあるようです。

数年も住んでいると英語は話せないまでもだいたい理解できるようになるのですが、言葉の壁のあとに立ちはだかるのが文化の壁です。この文化の違いが如実に現れるのが教育システムだと思います。クリティカル・シンキング(批判的思考)、エッセイの書き方、物事の説明の仕方、教授とのコミュニケーション、習う事柄の質と量、全てが違う中で戸惑うことが多いのも事実ですが、同時に授業でわからない事・不明な事を動画共有サイト等で、それも世界の名門校の授業を聞きながらフォローアップできるのも一つの魅力ではないかと思います。最近は学術部門のSNSも発達しておりますので、他の人のエッセイや論文をDLして参考にしたりすることもできますので、文字どおり世界中と繋がっている感覚で神学を学ぶことができます。

日本でもたまに報道されたりしますが、こちらの教会は「男児児童虐待」という大きな傷を経験しました。スキャンダル発覚当時、こちらに留学していた会員の「当時は教会はガラガラだったよ」という証言が嘘に思えるくらい、教会は人であふれかえっている印象です。実際、被害が最も甚大だったボストン教区は召命が増えているという報告さえ受けていますし、近所にあります教区神学校を眺める限りでは召命が不足しているようには思えないほどです。先日、メルボルンで行われた司祭叙階式によりますと、七名のうち二名がオーストラリア出身、あとはインド、フィリピン、ベトナム、そしてアフリカ各国からの神学生ということでした。一般的にオーストラリアに居住するためには英検1級をはるかに凌ぐ高い水準のIELTS(語学試験)スコアが要求されるのですが、面白いことに多民族国家オーストラリアで司牧するためには、英語というよりは母国語の能力の方が要求されますので、IELTS4.5〜5.0(英検2級程度)の英語力があれば十分なようです。

・『希望の丘』(74号)2018年10月発行より

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