聖書外典について

「聖書外典」はゴシップ記事のようなものでしょうか。『ヤコブ原福音書』や『トマスによるイエスの幼年物語』を読みましたが、そこに書かれているイエス様は、とてもいたずらっ子でしたが…。

『ヤコブ原福音書』や『トマスによるイエスの幼年物語』は、どちらも「新約聖書外典」と呼ばれる書物で、西暦200年前後に執筆されたと考えられます。著者について正確なことは何も分かっていません。

『ヤコブ原福音書』の主人公はマリア様です。物語はマリア様のご誕生の次第から始まり、神殿へのご奉献、ヨセフ様との生活、イエス様のご出産、そしてヘロデ大王による幼子の虐殺物語で結ばれています。この内容から推測して、著者はマリア様にとても関心を持っていた人だと言えそうです。

『トマスによるイエスの幼年物語』には、イエス様の五歳から十二歳までの物語が収められています。ご指摘のように、ここに登場するイエス様にはあまり好感が持てません。

これらの書物は、いずれもマタイやルカの福音書からヒントを得て書かれています。マタイやルカ福音書はイエス様のご誕生の次第は書きましたが、マリア様のご誕生についてもイエス様の幼年期についても、ほとんど何も記していません。この「空白の部分」に関心を持った後代のキリスト者によって、『ヤコブ原福音書』や『トマスによるイエスの幼年物語』が書かれました。いずれも想像の物語だと言えます。

「外典」を新約聖書と同等に扱わない配慮は大切です。「外典」は信仰の基準となる書物ではありませんし、その価値は全くありません。いずれも悪意を持って書かれた書物ではありませんが、現代のキリスト者にとっては、とるに足りない内容のものがたくさんあります。「外典」と比較してみると、「正典」(新約聖書)がどんなにすばらしい書物であるかがよくわかります。

同時に「外典」は、当時のキリスト者の考え方や関心事を知るための資料としては価値があります。キリスト教が誕生して間もない二世紀、三世紀の人びとが、なぜあのような少年イエスを描き出したのでしょうか。その理由を探ってみることは、わたしたち自身の信仰のあり方を反省するきっかけになるかもしれません。

「新約聖書外典」と呼ばれるものは、上記二書のほかに、『ペトロ福音書』『トマス福音書』『エジプト人福音書』『ペトロ言行録』『パウロ言行録』『ペトロの黙示録』など、20書以上あります。

●回答者=鈴木信一神父(聖パウロ修道会)

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