主の変容

8月6日は主の変容の祝日です。イエスが、宣教活動の途中に三人の弟子たちだけを連れて山に登り、まばゆい姿へと変わられたことを記念する祝日です。マルコによる福音書では「イエスの姿が彼らの目の前で変わり、服はまっ白に輝き、この世のどんなさらし職人の腕も及ばぬほど白くなった」と記されています。直視することのできないような輝きやこの世にはあり得ないほどの白さは、神だけが持っておられる栄光を表します。つまり、イエスは神としてのご自分の栄光を弟子たちに現されたのです。

イエスに従っていた弟子たちは、確かに日ごろからイエスのすばらしい教えを聞き、偉大なわざを目にしていました。多くの人が喜んでイエスを受け入れていることも知っていました。自分の仕事を捨て、親・兄弟を残してまでイエスに従った弟子たちですから、イエスの中に何か不思議な輝きを認めていたことでしょうし、イエスの名が広まるにつれて確信を深めていったことでしょう。

しかし、イエスはこれから十字架に向かって歩んでいかなければならないのです。人々の称賛の声は、嘲りの声へと変わっていきます。見るからにすばらしい奇跡を行っていたはずのイエスは、十字架の上で苦しみながら息を引き取ります。その中で弟子たちの信仰も大きく揺らいでいくことでしょう。

イエスはご自分の受難と死と復活について語り始めます(マルコ8章31節)。しかも、そのことをはっきりと話し始めます(同32節)。しかし、弟子たちは受け入れることができません。自分たちが希望をかけたイエスが排斥され、殺されるなどとは考えられませんでした。彼らもまた、「神の目」ではなく、「人間の目」でしか神の栄光を捉えることができなかったのです(同33節)。「変容」の出来事は、そんなときに起こります。まるで、イエスが捕らえられ、苦しめられ、十字架上で殺されていく中で、信仰の危機に陥るであろう弟子たちを励ますかのように、それは起こります。そう、弟子たちが、みじめな十字架のイエスの中にも神の栄光を見続けることができるように、まるでそのためであるかのようにイエスの栄光の姿がはっきりと現されたのです。

ところが、弟子たちはイエスの栄光の姿に圧倒されてしまいます。そして、この至福ともいえる時間を永続させようとします。こうして「仮小屋を建てましょう」と言うのです。しかし、その言葉と同時に、「これはわたしの愛する子、わたしの心に適う者。これに聞け」という神の言葉が聞こえ、イエスを残してすべて消え去ってしまいます。

イエスの栄光の姿が現されたのは、弟子たちにとって大きな恵みでした。しかしそれは、弟子たちがその至福にとどまるためではなく、十字架へと歩むイエスに従っていくために与えられた恵みでした。イエスの栄光の姿に力づけられて山を下り、イエスに聞き従いながら、弟子たちもまた自分の十字架を担っていくことを神は望んでおられるのです。

弟子たちは、十字架に向けての歩みを始めたとき、イエスの栄光の姿を見るという恵みを受けました。このことは、私たちに大きな希望と信頼の心を与えてくれます。私たちも、自分の十字架を担って歩み始めるとき、そのために必要な恵みを神が必ず与えてくださるという信頼です。困難が大きければ大きいほど、与えられる恵みも大きくなることでしょう。祈りの中で、ミサの中で、あるいはもっと別の機会に、神はきっと救いの喜びをかいま見せてくださることでしょう。しかし、それは私たちがその喜びの中に立ち止まるためではありません。恵みに支えられて、外に出て行き、日々の十字架を歩み抜くために与えられるものなのです。

主の変容の祝日にあたって、私たちに約束されている栄光のすばらしさを深く味わうと同時に、どんな困難の中にあっても主キリストに信頼と希望をもって生きていくことができるよう、恵みを願うことにしましょう。

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