私の召し出し 山口輝男神父

私は聖パウロ修道会に入会した動機について、はっきりこれという動機を思い起こせない。幼い頃の生活環境だったのかも知れない、そんな気がする。入会までの思い出として私に残るのは、なぜか小学校のことよりも教会のことである。

私は韓国の釜山に生まれたが、家族は終戦直後、日本に引き上げ、長崎の相ノ浦の官舎に住まうこととなった。当時三歳だった。小学校に入る前、私は長崎純心聖母会が経営する幼稚園に通った。家から教会の幼稚園まで毎日、近道をして一時間の距離を歩いて通った。汽車が通る鉄橋の橋を渡り、山道を歩かず、トンネルをくぐって幼稚園に行った。私はシスター方のお名前を思い出せないが、入会した後、あるシスターは幼稚園生の頃の私のことを記憶しておられた。私の家は私が小学四年生の頃、相ノ浦から佐世保の松山町の田舎に移転した。父はその前に他界した。

私は小学校を卒業した当日、三学年上の兄を追ってパウロ会に入会した。入先に先立ち、当時志願者募集をなさっていた、今は亡きパウロ山野修道士さんが訪ねてこられたことを記憶している。そして私は一度クリスマスに福岡修道院に招かれた。佐世保から博多までの短い距離ながら、私にとっては初めての一人旅だった。駅のプラットホームに降り立つと、山野修道士さんが「山口輝男君」と書いたプラカードを持って近づいて来られた。私は恥ずかしい反面、安堵した。

当時、家は母と祖父母と私の三人暮らしだった。母は毎朝私の手を取ってごミサに通った。私は毎朝ミサの侍者(当時「ミサ応え」と言っていた)をつとめた。ミサは当時ラテン語でなされた。ラテン語の意味は理解していなかったが、ミサに欠かせない役目を果たしているような気がした。教会に通う中で、司祭になりたい、そんな思いが私の中にめばえていったのかと思う。主任神父は当時、スカボロ会の神父様だった。ボロー、ペロー、ガイヤ神父の名を思い起こす。熱心な神父様だったと記憶している。ある年のクリスマスの祝いに、佐世保に停泊していたミズリー号に、教会の子供たちを連れて行ってくださった。ミズリー号の中は何層もあり、部屋が複雑に組み込まれていた。その大きな一室でご馳走になり、みんなプレゼントをいただいた。楽しい思い出の一つである。

私は今にして、母に祈ることを教え育てられたように思う。佐世保の松山の家には風呂がなかったので、銭湯や近くの親戚のうちで風呂浴びをしてから、夜の山道を母と私はロザリオを唱えながら家に帰った。祈ること、聖母への委託が召命への準備になっていたかもしれない。

入会した当時、今は帰国なさっているイタリア人のアンジェロ・カステロット神父様が院長、マテオ・プラッサ神父様が志願者担当だった。まもなく東京から桑島神父様が来られ、それから中村修道士さんが来られた。

院長のカステロット神父様は、当時リュウマチをわずらっておられ、季節になると痛みが激しく、事務所に呼ばれて痛み止めの薬を塗り、揉んでさしあげた。親近感を感じた経験だった。

プラッサ神父様は志願者と一緒に掃除をなさったが、雑巾洗いをトイレの流しでなさったのには、びっくりした。一度私は風邪を引き、三十九度の熱を出し寝込んだが、つきっきりで看病してくださり、肌着の着替えから濡れたベットシートの交換までしてくださった。

桑島神父様について思い出すのは、ある日曜日の昼食後、みんなに修道院の運動場でソフトボールをすると声をかけられた。私はしたくないと返事したと思うが、怒った神父様は私の顔を激しく平手打ちなさった。それで従順を教わった気がする。神父様は字が上手で、毎週のように上映された修道院での映画のお知らせのポスターを書かれ、私たちは近隣の電柱に貼って回った。

中村修道士さんについては、夜の停電の時のことを思い出す。自習中のことだった。突然、電灯が消えた。すると中村修道士さんは間をおかずに私たちに、机のものをしまうようにと言い、暗算の練習を先導なさった。

私は神父様方に見守られながら、福岡の中学時代をのびのびと過ごし、召命の危険を覚えることがなかったことを、感謝しなければならない。

私は思う。召命は自分で選んだものであると同時に、それ以上に神様が準備してくださったものだということを。

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