流しそうめんの心 楠本正良修道士

まずは故郷の紹介をしましょう。出身地は生まれも育ちも佐世保市相浦町です。出身教会は小高い丘の上に真っ白くそびえ立つカトリック相浦教会です。相浦の商店街は相変わらずローカルですが、教会周辺は一変しまして、大学、新興住宅が建ち並び、海を埋め立てて佐世保と相浦の魚市場が合併したので道路の拡張、大型車の通行量が増え、にぎわっています。もう一つ自慢するとすれば、元プロ野球選手の城島選手が相浦小学校出身で私の後輩になる。町の一角には城島健司ベースボール記念館もあります。

終生誓願(1975年)

さて召命のきっかけになったことについてのテーマを与えられました。私の聖パウロ会への入会は中学一年生ですので、入会前の小学生時代にさかのぼってみることにしよう。

私の家族は両親と兄弟三人でした。姉を入れると四人ですが姉は二歳の時病死している。兄と弟、私は次男です。貧しいながらも幸せな生活でした。ところが小学三年生から不幸の波が正にヨブの信仰のように押し寄せてきました。九歳上の兄が入院したのです。父は身体が弱く、食事、洗濯をし、母が魚の行商をしてなんとか生計を立てていました。兄は下の弟の世話はもちろんのこと、家畜の餌をもらうため十キロ以上両天秤でかついで相当無理をしていました。十九歳の時に天に召されました。愚痴ひとつ言わなかったようです。

終生誓願(1975年)

さらに私が五年生になった五月、今度は父が倒れました。「手遅れと言われたとよ!」と親しくしていた近所のおばさんに話していた母の悲しい叫びを忘れもしません。父はさぞかし無念だったでしょう。「正良、母さんの言うことを聞けよー」と最後に言ってくれました。

たまたま通りかかった主任司祭が病者の塗油を授けて下さった直後に、父は五十三歳の人生を神様にお返ししたのです。

誓願25年(1994年)

六年生の時、今思えば私にとって人生を分ける大きな運命の時がきていました。パウロ会から来たという男性は、何か声やしぐさが女性的で笑顔の中に優しさのある方でした。「どう? 一度きてみないかい!」とパウロ会のパンフレットを見せながら誘われました。パウロ山野修道士でした。なぜかしら「行ってみたい!」と思い、思わず「はい! 行きたいです!」と答えてしまったのです。

ペトロやヨハネがイエスの誘いに両親やすべてをおいてすぐに従ったのとは比べることができませんが、これがパウロ会への召し出しになろうとは、ほとんど何にも分かっていなかった私ですが、何で行きたいと即答したのかいまだに分かりません。母にとっては、たった親子三人になって寂しい思いをしていた矢先なのに「まだあなたは私から苦しみ寂しさを要求されるのですか?」といった心境だったに違いありません。

誓願25年(1994年)

母はどうしたらいいかとまどい、親戚中を駆け回り、意見を求めたようです。結局、「息子の気持ちを大事にしたら!」「父ちゃんが生きていたら賛成だったよ! 信仰厚かったけん!」などと皆、勧めて下さったのでした。それでやっと母も決心がついたようでした。

このようにして中学一年生から十二名の同級生と福岡の志願院へ入会したのでした。入会してからも母の励ましに支えられました。私の誓願二十五周年まで長生きしてくれまして、八十三歳で召されました。私の同級生はいつの間にか自分一人になってしまいました。でもパウロ会の経験をしたことがプラスになって同級生だけでなく、先輩、後輩たちが聖パウロ協力者会会員となって活躍されています。あちらこちらの教会で役員をして私たちを快く迎えて下さいます。

誓願25年(1994年)

今、召されたことへの感謝、至らなかったことへのお説び、まだ続けていくための鍛錬、祈り合うことの大切さを感じています。身体は今ではあまり丈夫な方ではありませんので、少しでも長く、細く、頑張っていきたいと思っています。私に関わる全ての人への感謝を日々忘れることなく前進していきたいです。

いろんな辛いことに直面しても、水に《流しそうめん》の心・・・お後がよろしいようで!

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