パウロと女性司祭

パウロは「女性司祭」について賛成ですか、反対ですか?

大変ユニークで興味深いご質問ですが、難問です。パウロの時代の教会に、司祭は存在しませんでした。その意味では、パウロは「女性司祭」について何も言っていません。

教会に司祭が登場し、教会の要として機能するのは、ずっと後代のことです。現在では司祭ぬきの教会は考えられませんし、司祭になるには、一定の基準を満たすことが求められます。男性であることも基準のひとつです。

しかし、パウロの時代の教会の状況は大きく異なります。不明な点も多いのですが、当時の教会の組織も、権威も、役職に就く者の資格も、今とは大いに異なっています。パウロの時代の教会において、権威を持っていたのは使徒だけで、その他の役職はみな「奉仕の職」と考えられていたようです。共同体の祈りや、主の晩餐を運営するのも「奉仕の職」に就く者の務めでした。この職に就く資格は男性にも女性にも与えられていました。男女の別を問わず、適任者が奉仕の職に就いたのです。パウロの仲間のひとりであったフェベは女性でしたが、ケンクレアイ教会の奉仕者でした(ローマ15・1参照)。女性が教会の奉仕職に就くという伝統は、西暦二世紀の前半まで確認されています。

イエス様は、ご自分が司祭であるとはお考えにならなかったでしょうが、パウロの死後、「イエス様こそ、まことの大祭司だ」と主張する者が登場します。『ヘブライ人への手紙』の著者です。さらに時代が下ると、「教会に属する者は、男女を問わず皆司祭だ」と主張する者も登場します。『一ペトロ』や『ヨハネの黙示録』の著者です。

わたしたちを王とし、御自身の父である神に仕える司祭としてくださった方に、栄光と力が世々限りなくありますように、アーメン。(黙1・6)

ユダヤ教では、司祭の家に生まれた者だけが司祭となる資格を有しています。当然イエス様が司祭だと主張することはナンセンスですし、教会に属する者が皆司祭だという黙示録の主張もナンセンスです。このことを考えれば、初代教会における多様な司祭理解が、いかにユダヤ教の司祭理解にとらわれない、新しいものであったかが分かります。この新しさは、パウロの時代に、「教会の奉仕者」を男性にも女性にもに解放し、適任者を就かせたという事実が持つ「新しさ」を継承したものだと言えるでしょう。

ここで再度、ご質問の趣旨に戻りましょう。現在の教会において「女性の司祭」が誕生することに対して、女性だという理由でパウロが反対するとは考えられません。

●回答者=鈴木信一神父

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