恐れることはないという種 四旬節第2主日(マタイ17・1〜9)

私たちは、これまでの歩みを振り返る時、自分にいろいろな意味で影響を与えた【恩師】がいるのではないでしょうか。その人は、教師であったり、親戚の誰かであったり、または、司祭やシスターであったりすることでしょう。そして、その恩師の一言や姿は、自分を支え、導いてくれる大切な宝となって、私たちを育ててくれていることでしょう。

きょうのみことばは、イエス様の変容の場面です。みことばは、「6日の後」という言葉から始まっています。この「6日の後」というのは、イエス様が弟子たちに「受難の告知」をしてからのことのようです。弟子たちは、自分たちが「メシア(救い主)」と思っていたイエス様が、「長老、祭司長や、律法学者たちから多くの苦しみを受けて、殺され、そして3日目に復活する」(マタイ16・21)ということが信じられなかったのです。弟子たちは、この「受難の告知」を聞いてから、「イエス様は本当に『メシア』なのだろうか」という大きな疑問がでてきたのではないでしょうか。

イエス様は、そんな弟子たちの気持を感じられ、「ペトロとヤコブとその兄弟ヨハネ」だけを連れて高い山にお登りになられます。ここは、「ダボル山」と言われていてお椀を逆さにしたような山です。今でも、山頂に行くには、大型バスで行くことができず、途中から小型のバスに乗り換えてから行くくらいカーブが多く、道幅も狭い所です。イエス様と弟子たちは、徒歩で登られたのか、ロバやラクダを使われたのか分かりませんが、かなり時間をかけて登られたことでしょう。そして、山頂に登られたとき、イエス様のお姿が変わられ、「顔は太陽のように輝き、衣は光のように白く光った」のでした。マタイ福音書は、マルコやルカが「イエスの顔の様子が変わり」と表しているのと違って「顔は太陽のように輝き」というもっと詳しく描写しています。このことで、衣服だけではなく、体まで太陽のように、直視できないくらいの輝きに変わったのではないでしょうか。もしかしたら、輝きだけではなく、太陽のような温かさも感じたのかもしれません。弟子たちは、今まで接したことがないような初めて見るイエス様の姿に驚き、この方こそ「メシア」ではないかと改めて信じたのではないでしょうか。さらに、イエス様だけではなく、モーセとエリアという律法と預言者の代表する2人まで現れます。どおして、弟子たちは、この2人が「モーセとエリア」ということが分かったのか、という疑問が浮かんできます。たぶん、彼らの心の中に「この方たちは、『モーセとエリア』に違いない」という確信するほどの強い感覚を覚えたのかもしれません。
 
ペトロは、「主よ、わたしたちがここにいるのは、素晴らしいことです。お望みなら、わたしはここに3つの仮の庵を造りましょう。」と言います。この「仮の庵」とは、レビ記に出て来る「……7日の間は、主に捧げられた仮庵の祭りである。」(レビ記23・33)を思い起こさせます。ペトロは、感動し過ぎてこの素晴らしい状態を「7日間」も保っていたかったのではないでしょうか。素晴らしいこと、楽しいことを保ち続けたいというのは、私たちにも言えることかもしれません。しかし、みことばは、表面の素晴らしさだけではなく、もっと大切なことがあるということを気づかせてくださいます。

みことばは、「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者。彼に聞け」とおん父が弟子たちに語りかける様子を伝えます。おん父は、私たちのためにご自分の愛する子であるイエス様を遣わされました。それは、私たちをご自分の子と同じように愛されていたからと言ってもいいでしょう。そのおん父は、私たちに「彼に聞け」と言われます。私たちは、イエス様の声にどのくらい耳を傾けているでしょうか。ペトロのように、周りの素晴らしさ、心地よい恵みだけを保ちたいという【自我】だけに固執して、もっと大切なことに気がつかない、「耳を傾けていない」ということはないでしょうか。おん父のこの言葉は、私たちに「振り返り」のヒントとなることでしょう。

イエス様は、おん父の声に、非常に恐れ倒れ伏している弟子たちのところに近づかれ、彼らに触れられ「起きなさい。恐れることはない」と言われます。このことは、私たちに勇気をくださる言葉と言っていいでしょう。私たちは、弟子たちのように自分たちの弱さ、罪深さに気がつき、倒れ伏すくらいに落ち込むことがあります。そんな私たちにイエス様は、「起きなさい。恐れることはない」と声をかけてくださいます。私たちは、時々イエス様の声を聴き漏らし、失敗することがあります。それでも、イエス様は、私たちとともにいてくださり、いつでも手で触れ起こしてくださいます。私たちは、イエス様のこの愛の手、言葉に信頼してまた、イエス様と共に歩むことができたらいいですね。

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