主の洗礼

主の洗礼の祝日は降誕節の最後の日に祝われます。そして次の日から年間の歩みが始まります。このような位置付けにも、典礼暦上の主の洗礼の祝日の意味が表されているように思えます。つまり、主の洗礼の出来事は、イエスが人となられた神の子であることが天からの声によってはっきりと示された出来事(降誕節)であると同時に、聖霊が注がれることによって御父から委ねられた使命をイエスが公けに開始した、公生活(年間の歩み)を開始した出来事として祝われています。

さて、使徒を初めとするイエスの弟子たちは、主の洗礼の出来事をとても重要なものとして受け止めたようです。四つの福音書すべてに語られているからです(ヨハネによる福音書の記述は間接的ですが)。今回は典礼にしたがってマルコによる福音書を読みながら、使徒たちが受け取ったそのすばらしいメッセージの一端に触れることができれば、と思います。

そのころ、ヨハネという人がヨルダン川で人びとを悔い改めへと招き、そのしるしとして水で洗礼を授けていました。そこへイエスがやって来ます。イエスは他の人びとと同じようにヨハネから洗礼を受けます。ところが、イエスが水の中から上がるとすぐ、天から霊が降ります。そして、「あなたは私の愛する子、私の心に適う者」という声が天から聞こえて来るのです。

教会は後に、このイエスの洗礼の出来事によって「洗礼」の意味が大きく変わったのだということを理解しました。それまで、つまりヨハネにいたるまで、洗礼は悔い改めのしるしとして行われる人間の業でした。しかし、イエスの洗礼の場合、そこに神が介入されます。神がご自分の霊を注ぎ、ご自分の子であることを宣言されるのです。イエスの洗礼以後、イエスの名によって洗礼が授けられるとき、そこに必ず神が働かれるようになりました。ヨハネはこのことを「わたしは水であなたたちに洗礼を授けたが、その方は聖霊で洗礼をお授けになる」(8節)と言い表したのです。

イエスの洗礼は、私たちの受けた洗礼がどれほどすばらしいものであるかを示しています。私たちの受けた洗礼は、単なる水の洗礼ではありません。洗礼によって私たちは御父の霊を受けたのです。霊は私たちの中に留まり続け、私たちは霊を宿す住まいとされたのです。こうして、私たちもイエスと同じように「神の子」としていただきました。神から愛され、神の心に適う子としていただきました。神は、今もそのことをはっきりと宣言し続けておられるのです。私たちは、弱く罪深い人間でありながら、確かに、聖霊によって神と一つに結ばれた者とされ、神の子に与えられるあらゆる恵みを受け継ぐ者とされたのです。

一年の初めに、主の洗礼の出来事を黙想し、それを通して私たち自身の受けた洗礼のすばらしさに思いを馳せるのはすばらしいことです。洗礼によって、私たちが父と子と聖霊の交わりの中に生きる者とされたこと、私たちの中に父と子と聖霊の神が宿っているという事実のすばらしさを、深く味わうことにしましょう。

同時に、洗礼の後、人びとを救う十字架への道を歩んで行かれたイエスに倣うようにしましょう。洗礼のときにイエスに注がれた御父の霊は、イエスの中にあって、イエスを神の国の宣教へと、十字架上の自己奉献へと強く駆り立てました。イエスは御父の子として、この霊の強い導きに従わずにはいられなかったのです。洗礼のとき、私たちの心に注がれた聖霊は、イエスと同じように私たちをも神の国の宣教へと強く駆り立てています。キリストに従って救いの使命を果たすよう駆り立てているのです。私たちも神の子とされた者として抑えることのできないほど強い聖霊の導きを感じているはずです。ですから、神への信頼と勇気をもって、この強い導きに身を任せることにしましょう。この一年、日々、三位一体の神の交わりに招き入れられたことのすばらしさを味わうとともに、救いを渇望する愛の神の導きに答えていくことができますように。

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