サンタクロースの姿について――キリスト教知恵袋

サンタクロースが現在のような「赤い服を着てトナカイに乗り、煙突から入って子どもにプレゼントを置いていく太っちょのお爺さん」の姿になるまでの過程を教えてください。

赤い服に白い髪とお髭のサンタクロース。今私たちがイメージするサンタクロースがこの世に大々的に登場したのは1831年のアメリカです。しかもこれがコカコーラの宣伝広告という事実を知ったとき、あなたはどんなふうに感じましたか?

そうです。今日私たちがイメージするサンタさんは、彼がコカコーラを美味しそうに飲んでいるポスターから全世界へ広がりました。しかし、4世紀に生きた聖人ニコラスの姿が1500年の間に今のような姿になるには、やはりさまざまなドラマがあったのでした。

ロシアの守護聖徒『ニコライ』
トルコ南西部の都市ミラに始まった聖ニコラスの奇跡物語とイコン(聖画像)は、10世紀のロシアにキリスト教到来とともに入りました。そしてロシアでも聖ニコラスによる奇跡が起こり、彼は『ニコライ・チュドウォリツ(奇跡を行う人)』と呼ばれるようになります。17世紀シベリアに宣教師の活動が及ぶに至り、ニコライとトナカイの歴史的出会いがなされます。北極圏での厳しい生活環境が魔術師(シャーマン)を必要とし、その人間を超えた彼らの仕事を助けるためトナカイが活躍しました。つまり、冬の夜空を駆けるトナカイはロシアの地から生まれたのでした。

イタリアの聖人『ニコラ』
1087年ノルマン人の水夫により、水夫たちの守護者と名高い聖ニコラスの遺物はイタリアのバリへ移されました。ここでも『サン・ニコラ』による様々な奇跡が起こります。特に彼の墓から出てくる液体『マナ(天与の食物)』はバリでも多くの奇跡を行いました。11世紀末からの約200年間、十字軍により聖ニコラの奇跡物語と名声はヨーロッパ全土に広がり、各地に彼の守護する教会・都市が生まれました。

ジンター・クラースと北欧の神々
15世紀のオランダで聖ニコラスは『ジンター・クラース』と呼ばれるスペイン人の司教の姿をとり、聖ニコラスの記念日12月6日を境に、子供たちの善悪いずれの行為もことごとく書き留めた台帳を手に、プレゼントや罰を与える役割をしました。

これらの習慣の多くは、『ウォーデン』を代表とする北欧の神々から来る風習の名残でした。また北欧の小柄な原住民も聖ニコラスと結びつき、とんがり帽子に赤い服の小人さんがクリスマスにプレゼントを運んで来る彼らの姿は、煙突を通って家の中に入るサンタの原型となりました。

プレゼントの習慣
12世紀の初め、フランス中央部の修道女たちが聖ニコラスのイヴの夜に密かに外へ出て、貧しい家庭に果物を置いて行ったことに起源があるようです。この習慣はヨーロッパ各国へ、そして教会から家庭へと移っていきました。

宗教改革
16世紀初めに起こった宗教改革は聖ニコラスとクリスマスにも大きな影響を与えました。プロテスタントの国々において聖ニコラスの習慣は世俗的なものに変えられていきます。『毛皮のニック』や『クリスマスの男』等の名前で呼ばれ、威厳ある司教のイメージはどんどん消えて行ったのでした。

サンタクロース
1626年に現在のニューヨークのマンハッタン島にオランダの最初の移民船が到着しました。その船首像のジンター・クラースは移民と共に上陸し、広場に飾られました。その40年後マンハッタンをイギリス人が後を継ぎ、ジンター・クラースはイギリス風の『サンタクロース』と呼ばれるようになりました。

1822年ニューヨークのムーア教授が子供たちのために書いたクリスマスの1篇の詩が、子供のみならず大人をも巻き込むブームとなり、聖ニコラスとサンタクロースをほぼ完全に結びつけることになります。しかし、この時点ではサンタクロースのイメージは確立しておらず、その後多くの画家により少しずつイメージ化されていきます。それは古くから伝わる聖ニコラスの様々なイメージがアメリカ大陸の開拓という大きな夢とともに築き上げられ、最終的にコカコーラの宣伝に登場するサンタクロースとなったのです。

そして今では煙突を通るような小さな小人ではない、商業主義から生まれたたくましい『サンタさん』が世界中の子どもたちに夢を与え続けているのです。

参考資料:ロビン・クリクトン著『サンタクロースって、だあれ?』(教文館)

・回答者=田端孝之神父

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