迎え入れるという種 待降節第4主日(マタイ1・18〜24)

私たちは、悩んだことがない人はいないと言ってもいいでしょう。それは、小さな悩みから、人生を左右するような悩みまでいろいろあります。例えば、「今日は、何を着て会社に行こうか」というものがあれば、「どちらの学校に入ろうか」というものもあります。しかし、どちらかに決めなければ、前には進みません。ここでは、【決める】ということが大切になってきます。

きょうのみことばは、ヨセフ様へのお告げの場面です。ルカ福音書には、マリア様が起きている時に、大天使ガブリエルによってお告げがあり、マリア様と大天使ガブリエルとの会話がありました。それに対して、マタイ福音書では、ヨセフ様が寝ている時に天使が夢に現れ、会話もないうちにお告げがなされています。

みことばは、「イエスの母マリアはヨセフと婚約していたが、同居する前に、聖霊によって身籠っていることが分かった。」というように書かれてあります。ここでは、いきなり「マリア様が身籠っている」という事実から始まっています。時間的には、まず、大天使ガブリエルからのお告げがマリア様にあった後、ヨセフ様へのお告げがあったのです。その間に婚約をしたのか、婚約中にあったのかは定かではありません。当時は、結婚した後に同居していたようですし、また、婚約によって二人は、夫婦として認められていたようです。ですから、ヨセフ様は、マリア様が身籠ったということを聞き、自分以外の男性との間の子ではないかと思って、ひそかに離縁しようと決めたのです。

みことばは、「マリアの夫ヨセフは正しい人で、マリアのことを表ざたにするのを望まず、ひそかに離縁しようと決心した。」とあります。ヨゼフ様は、マリア様も彼女から産まれて来る子に対しても、本当に愛していたのでしょう。彼は、マリア様を愛の眼差しで見つめます。そして、自分が置かれている生活の場、信仰生活を見つめます。彼は、ユダヤ教の律法を正しく守っていました。そのため、彼女を傷つけないように、「どうすれば、彼女がこの先、幸せに生きることができるのか。」と悩んだことでしょう。ヨセフ様は、悩まれた末、ようやく「ひそかに離縁しようと決心」したのでした。その時、天使が夢に現れお告げがあったのです。天使は、ヨセフ様がどうしようかと悩んでいる最中ではなく、彼が決心したことを確認した時に夢に現れます。言い換えれば、「腹を据えた時」と言ってもいいのではないでしょうか。これは、私たちの生活にも当てはまるのかもしれません。悩んでいる最中に、周りからいろいろなことを言われても、自分が出した答えに納得していないうちに決めてしまっては、うまくいかないものです。

天使は、ヨセフ様がしっかり自分を見つめおん父のご計画を受け入れる準備ができたことを知り、夢に現れたのではないでしょうか。天使のお告げは、ヨセフ様が決心したことと180度違ったものでしたし、律法の教えにも反したものでした。しかし、ヨセフ様は、マリア様とともに、「『メシア』をこの世に生み出す」というおん父からの使命を受け入れたのでした。

天使のお告げの内容は、「ダビデの子ヨセフよ」というところから始まります。これは、メシアが「ダビデ」の子孫から産まれるという預言が成就するという意味もあるのでしょうし、天使が「ヨセフ」という名前を呼ぶことによって、これから大切な召命(使命)が与えられるということも意味しているようです。さらに、ヨセフが悩んでいた原因である、マリア様の身籠っていることに対して「聖霊によって」ということをしっかりと伝えます。そして、男の子を産むこと、その子に「イエスと名づけること」を伝えます。この「イエスと【名づける】」と言うことは、ただ単に「命名」するということだけではなく、これから産まれて来る子の、「人格全体」を表すということのようです。ですから、「イエス」という名前をつけるということは、彼が「自分の民を罪から救う者(メシア)」であるということを意味していると言ってもいいでしょう。

ヨセフ様は、自分がダビデ家の子孫であるということを知っていたのだと思います。しかし、彼への天使のお告げに対して、ヨセフ様は「エッ、自分の時。まだ、他の人でもいいのに」と思ったのか「ついにその時が来たんだ」と思ったのか分かりませんが、イザヤの預言が成就するということを受け入れ、マリア様を妻として迎え入れます。この【迎え入れる】というのは、マリア様の「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身になりますように」(ルカ1・38)と同じ意味ではないでしょうか。

私たちは、人生の中で起こってくる「決断」の時があることでしょう。それは、一つの「召命」の鍵になるのかもしれませんし、「聖霊」の働きがあると言ってもいいでしょう。そのような時、素直に自分を差し出すという謙遜な心と勇気を頂くことができたらいいですね。

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