聖ヤコブ使徒

聖ヤコブ使徒の祝日は7月25日です。ヤコブは、ガリラヤ湖で漁師をしていたゼベダイの息子で、共観福音書によれば、イエスの公生活の初めに、ペトロとアンデレのすぐ後に、兄弟ヨハネと共にイエスの弟子として招かれました(マタイ4・18─22など)。

イエスは、重要な出来事に際して、このヤコブを、ペトロ、ヨハネと共に連れていきました(変容の出来事17・1、ゲツセマネでの祈り26・37など)。しかし、イエスの死後は状況が変わっていったようです。福音書の中では、必ずと言っていいほど、ヤコブ、ヨハネの順で記されていたのが、使徒言行録1・13 では、ヨハネ、ヤコブの順で記されています。また、使徒言行録の最初のほうで、しばしばペトロとヨハネが共に宣教活動をしていますが、そこにもはやヤコブの名前はありません。ようやくヤコブが現れるのは、その殉教を語る短い記述の中です(12・1─2)。

12使徒の中で最初に殉教したというすばらしい事実は、しかし、逆にヤコブだからヘロデ王は殺せたのだということをも示しているのです。ペトロに手をかけると暴動になる恐れがあるから、まずはヤコブを殺して様子を見ようということです。実際に、使徒言行録12章の記述は、そのようになっています。

アンデレについて記したときにも述べたことですが、このような変化に対するヤコブ自身の思いについて、聖書は何も記していません。しかし、私たちはその思いを容易に想像することができます。ただ、どのような状況に置かれても、使徒たちが自分に与えられた使命を忠実に果たそうとしたことを、聖書は伝えるのです。

さて、ヤコブの祝日にミサの中で朗読される福音の箇所(マタイ20・20─28)は、ヤコブのすばらしさを語るものではありません。むしろ、ヤコブ(そしてヨハネ)がイエスの弟子としていかに師の思いとかけ離れたところにいたかという点を浮き彫りにするものです。

ヤコブとヨハネの母親がイエスのもとに来て、二人の息子をイエスの王国で最も高い地位に就けてほしいと願います。イエスはこの願いに対して、母親に答えるのではなく、「あなたがたは……」という形でヤコブとヨハネに語りかけます。この願いが母親として息子の栄誉を願ったものであるにせよ、その裏には本人たちの野心と出世欲が隠れているからです。
この出来事は、エルサレムに入る直前に起きたこととして描かれています。イエスは、すでに三度にわたって、弟子たちにご自分の受難、死、復活を告げていました。人々のために苦しみを受け、身をささげることによって、御父の救いの計画を実現する。そのことがもう間近に迫っていました。しかし、ヤコブとヨハネの母親の願いは、彼らがイエスによって示された救いの神秘を理解しておらず、それとは異なるものを求めていることをさらけ出してしまいます。彼らだけではありません。他の10人の使徒も、この二人の兄弟のことで腹を立てることによって、結局、彼らと同じものを求めていたということをさらけ出してしまいます。

そこで、イエスは神の国における価値観を弟子たちに教えさとすのです。神の国における偉大さとは、人の上に立って権力を行使することにあるのではなく、むしろ皆のしもべとなって、人々に仕えることにあるということ。イエスはそれを実現するため、自らそれを生きるために来たのであって、弟子たちもこれに倣って、率先して人々のために自分の命をささげることを求めなければならないということです。

イエスは、ヤコブたちの願いに対して、「このわたしが飲もうとしている杯を飲むことができるか」と問いかけています。イエスの杯を飲むとは、イエスのために迫害され、殺されることを意味しています。ヤコブとヨハネは、イエスの杯を飲むことが、願いが聞き入れられるための条件と理解したのでしょう。しかし、イエスは、その杯を飲むこと、すなわちイエスのため、人々の救いのために自分の命をささげることが、すでに神の国における最高の栄誉であるということを教えているのです。

ヤコブは、自らが宣言したように、そしてイエスが認めたように、イエスの飲んだ杯を飲むことになります。確かに、ヤコブはイエスの生き方を通して、救いの神秘を理解したのです。

私たちは、イエスの教えに触れ、その生き方を見つめ、十字架の死と復活の意味を知っていながら、しばしばこの地上の栄誉を求めてしまいます。ヤコブがイエスの死と復活を通して変えられていったように、私たちも回心の恵みを願いたいと思います。皆のしもべになることを通して偉大な者になるのではなく、皆のしもべになって仕えること自体が、すでに偉大であることを理解し、そのように日々の生活を生きることができますように。

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