福者ヤコブ・アルベリオーネ司祭

11月26日は、私たちの修道会の創立者でもある福者ヤコブ・アルベリオーネ司祭の記念日(パウロ家族の諸会にとっては祝日)です。聖人・福者の記念は、通常、その人が地上での生を終え、帰天した日に行ないます。アルベリオーネ神父の記念日も、彼が亡くなった日(=天国での誕生日)である11月26日に定められました。

ヤコブ・アルベリオーネという人物について、またこの人物が昨年の4月27日に列福された(福者の位にあげられた)ことについては、当ホームページの中でもたびたび取り上げられてきましたが、今回は典礼上の記念日ということで「そよかぜカレンダー」でもアルベリオーネ神父について述べたいと思います。自分の会の創立者ということで、私自身の思い入れも強いため、いつもより長いお話になることをおゆるしいただきたいと思います。

ヤコブ・アルベリオーネは1884年、北イタリアの小さな村に生まれました。彼は、比較的早くから司祭になりたいとの望みを持ち、アルバという教区の神学校に入学します。そして、その年の終わりに、その後の彼の歩みにとって決定的な体験をしたのです。

それは、1900年の大聖年が終わり、新しい世紀(20世紀)を迎える夜のことでした。当時16歳だった神学生アルベリオーネは、まさに始まろうとしている世紀のために祈るようにとの教皇レオ13世の招きに応え、アルバのカテドラルで徹夜の聖体礼拝を行ないました。その頃の世界は、技術が飛躍的に進歩する半面で、さまざまな社会問題が先鋭化していました。このことは、思想面でも多くの対立を引き起こしていました。

この夜、アルベリオーネは聖体の前で、神秘的な体験をします。後に彼自身が記している言葉によれば、「ホスチアから一条の特別な光、すなわち『みな私のところに来なさい』(マタイ11・28)とのイエスの招きを、今までより深く理解する恵みがくだった」。「反対者が利用している手段を使って、今日の使徒とならなければならない……ことがはっきりとしてきた。主のために、そしてまた、自分が生活をともにするはずの新世紀の人々のために、何かを果たすための準備をするよう(神から)義務づけられているということを、ひしひしと感じた」。神からのこの招きを、アルベリオーネは、心に納め、時とともに深めていくことになります。

1907年に司祭に叙階されると、小教区での短い司牧期間を経て、神学校付きの霊的指導司祭、教授の務めを任され、1913年からは摂理的に教区報の編集責任を任されることになります。

その1年後、アルベリオーネ神父は、司教の許可を得て、任されていた教区のすべての任務から退き、数人の若者たちとともに、印刷学校「ピッコロ・オペライオ(小さな労働者)」を設立しました(現在の聖パウロ修道会)。神からの招きを実行に移す時が来たのです。

福音の宣教、信仰の深めに役立つ書物を出版して普及すること。それまで、教会に行かなければ、あるいは司祭や信徒との直接のかかわりを通してでなければ不可能であった宣教や信仰の深めのあり方に根本的な変化がもたらされました。より多くの人に、より迅速に、より多様な可能性と手段を提示することができるようになったのです。

現代の私たちは、当たり前のようにその恩恵にあずかっています。家にいながらにして、聖書を読み、教会の文書を読み、信仰を深めるためにさまざまな書物を選択することができます。今や、これらのことは特別にありがたいことではなく、当たり前のこととしか感じられません。それほど「マス・メディアによる福音宣教」が定着しているということなのだと思います。

しかし、「マス・メディアによる福音宣教」は、最初からすぐに受け入れられたのではありませんでした。当時の人々にとって、「マス・メディア」は教会に反対する人たちが使う悪の手段、あるいはそこまで行かなくとも教会にはなじまない世俗的なものでした。「マス・メディアによる福音宣教」どころか、「マス・メディア」と「福音宣教」は、互いに相反するものとして、アルベリオーネ神父の事業はうさんくさい目で見られたのです。

青少年を「働かせている」ということや、1915年に聖パウロ女子修道会を創立し、シスターたちに本を「売り歩かせている」こと(人々の目にはこのように映りました)も、こうした懐疑心や批判を増幅させていきました。しかし、苦難の中でも、アルベリオーネ神父は、これが神の救いのわざ、「使徒職」であることを確信し、かえってそれを拡大させていったのです。

しかしながら、アルベリオーネ神父にとっては、最初に「マス・メディア」ありきではありませんでした。前述した世紀を分ける夜の体験でも、最初に感じたのは「みな私のもとに来なさい」というキリストの招きでした。アルベリオーネ神父の原点は、「すべての人がキリストのもとに集まること」、言い換えれば「すべての人にキリストを与えること」なのです。そのための最も迅速で、最も効果的な手段が「マス・メディア」だったのです。だから、彼の生涯は「マス・メディア」に限定されるものではなく、常に「すべての人にキリストを」という目的のもとに進められていきました。

「すべての」(イタリア語で「tutto」)という形容詞は、アルベリオーネ神父の霊性の根幹を成すものです。彼は、神の招きを「最も迅速で、最も効果的な手段によって、すべての人(tutti)に、しかもその人全体(tutto)に、キリスト全体(tutto)を与える」ことと理解しました。

アルベリオーネ神父にとって、キリストとは、唯一の師です。この「師」としてのあり方は、「真理・道・いのち」です。アルベリオーネ神父は、ヨハネ福音書14・6にあるイエスご自身の言葉にヒントを得て、この考えを発展させていきました。キリストは、師として、完全な形で御父を示す方です(真理)。キリストが御父のうちに、また御父がキリストうちにおられ、御父がキリストのうちにあってその言葉を語り、その業を行なわれるのです(14・10─11)。だから、キリストを見る人は、御父を見ているのです(14・9)。しかし、キリストは御父を示されただけでなく、まず自らが模範として御父への道を歩まれました(道)。しかも、私たちがこの救いの道を歩むための糧、力、恵みとして、キリストはご自身を与えてくださるのです(いのち)。だから、人間は自らのすべてにおいて、つまり考えも、望みも、心も、体も、例外なくすべてにおいてキリストに生かされるようになることを目指すのです。

こうした考えが根本にあるため、アルベリオーネ神父は聖パウロ修道会、聖パウロ女子修道会のほかにも会を創立していくことになります。「マス・メディアによる宣教」が神のわざであるかぎり、神の現存である聖体のキリスト、司祭であるキリスト、典礼の場に現存されるキリストに奉仕し、キリストを輝かせる必要があります。こうして、師イエズス修道女会が生まれました。聖ペトロと聖パウロが教会の礎として協力したように、「マス・メディアによる宣教」は司牧の分野と連係する必要があります。そこで、司牧活動に奉仕する、よい牧者イエスの修道女会が生まれました。「マス・メディアによる宣教」を通してキリストに出会った人が、自らの招きに応えていけるよう守り導く必要があります。こうして、召命活動を行なう、使徒の女王修道女会が生まれました。さらに、4つの在俗会が生まれ、協力者会と合わせ、10の会が「パウロ家族」として、「最も迅速で、最も効果的な手段によって、すべての人にキリスト全体を与える」ために活動しているのです(日本ではこのうち4つの会が活動しています)。

アルベリオーネ神父は、第二バチカン公会議に参加するという恵みを受け、その中で「広報機関に関する教令」が発布されるという喜びにあずかった後、1971年11月26日に天の父のもとに召されました。

さて、その後も情報技術の発展には著しいものがあります。その中には宣教の大きな可能性が隠れています。同時に、人間の生き方や文化にも大きな変化が見られます。「すべて」という時、そこには、私たちが「世俗的」とか「意味のないもの」と考えて、無意識のうちに除外してしまうようなものも含まれます。「最も迅速で、最も効果的な手段によって、すべての人にキリスト全体を与える」というアルベリオーネ神父の挑戦は、今も続いているのです。

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