聖アンデレ使徒

11月30日は聖アンデレ使徒の祝日です。使徒たちの生涯やその教えから学ぶことはたくさんありますが、私は、最近、このアンデレという聖人が使徒たちのグループの中で置かれた状況と、それをアンデレがどのように受け入れ、生きていったかということについてよく黙想します。現代を生きる私たちに対してとても大切なメッセージがそこに示されているように思うからです。

アンデレは、その兄弟ペトロとともにイエスの弟子になりました。マタイ4・18〜22によれば(マルコ、ルカも同じことを記していますが)最初に召された弟子の一人ということになります。そのすぐ後に召されたもう一組の兄弟、ヤコブとヨハネを合わせると、アンデレは最初に召された四人の弟子の一人でした。

ところが、イエスの宣教活動が進むにつれ、この四人の中からアンデレの名前だけが抜け落ちるようになってきます。十二使徒が選ばれたときこそペトロの次にアンデレの名前が挙げられています(マタイ10・1〜4)が、大切な出来事のときにイエスが連れて行くのはペトロ、ヤコブ、ヨハネの三人だけになります。イエスが高い山に登り、その栄光の姿を見せたとき(17・1〜8)も、十字架の死を前にして苦しみのうちにゲツセマネの園で祈ったとき(26・36〜 45)もそうでした。

アンデレがどういう気持ちでこのことを受け止めたのか、聖書は何も語っていませんが、アンデレの気持ちを想像するのはそう難しいことではないでしょう。同じときに同じように弟子となったのに、自分だけが何かのけ者にされている。いったいどうしてだろうか。自分におちどがあったのだろうか。能力の差なのか。それにしても納得できない……。くすぶる気持ちがあったことでしょう。

しかも、いつの間にか自分の兄弟ペトロが十二使徒の頭になっている……。兄弟として誇りに思う気持ちの裏側に、どうして自分はそうなれなかったのか、というやり切れない思いがあったとしても不思議ではないでしょう。

アンデレがそのようなことを考えていたはずはない、と言う人がいるかもしれません。しかし、ヤコブとヨハネの母がイエスに「王座にお着きになるとき、この二人の息子が、一人はあなたの右に、もう一人は左に座れるとおっしゃってください」と願い出たときに、他の使徒たちは腹を立てたのです(20・20〜 28)。使徒といえども、皆どこかで他の人の上に立ちたいという思いを持っていたのでしょう。アンデレもそのうちの一人でした。だからこそ、一人だけ取り残されていくことに、焦燥感ややり切れなさを感じていたように思うのです。自分がペトロの兄弟でなければどれほど楽だったろうか。ペトロ、ヤコブ、ヨハネと同時に弟子にならなかったなら、こんな辛い思いをしなくてもすんだだろうに。何とも言えない引け目と三人に対する嫉妬。このような屈折した気持ちをアンデレが感じていたと想像するのは考えすぎでしょうか。

アンデレは、しかし、このような思いに押しつぶされはしませんでした。他の弟子たちがそうであったように、イエスの十字架の死と復活を体験して、大きく変えられていったからです。アンデレは、イエスの弟子として呼ばれたこと、「人間をとる漁師」にしていただいたこと(4・19)のすばらしさに気づきました。自分に与えられた使命のすばらしさに気づいたとき、他人に与えられた使命をうらやんだり、引け目を感じたりすることはなくなりました。かえって、ペトロやヤコブやヨハネに与えられたすばらしい使命をともに喜び、感謝することができるようになりました。

人はだれでも神からかけがえのない使命を与えられています。人間的に見れば優劣をつけることもできるでしょう。しかし、それはどんな使命であっても、神の目からはかけがえのない使命であり、量ることのできないほどの大きな恵みなのです。人間的に見て優れているように見える他の人の使命をうらやみ、自分のしていることに引け目を感じるか、それとも自分に与えられた使命のすばらしさに気づき、神に感謝を捧げるか、いったい私たちはどちらの態度を取っているでしょうか。

周りの人と自分を比較するのではなく、自分に与えられている恵みと使命のすばらしさに気づいて、喜びをもってそれを果たしていくことができるように、聖アンデレ使徒の取り次ぎを願いたいものです。

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